ふしぎデザインブログ

デザイン事務所「ふしぎデザイン」の仕事やメイキングについて書くブログです。

たいしたことないものを人に見せること

(自戒を込めて書きます)

自分で作ったもの、あるいは描いた絵、作った音楽、文章でも、なんでも良いんだけど、なにか作ったものを誰かに見てもらうことって結構ハードルが高い。

芸事を行う人ならわかると思うけれど、\これを作りました/ と発表することで、そのときの作者のスキルやセンスが見る人にダイレクトに伝わる。だから、上手くいかなかったものを見せることは、自分の力のなさをお披露目していることにもなってしまうだろう。怖い。できればそれは避けたい。自分がダサいやつであるということを悟られたくない。

 

けれど、それでもそれを見せることでしか得られないものがある。それは第三者の評価だったりとか、意外な人のつながりだったりとか、それなりの自信だったりとかする。それらは一人で作っているだけでは決して得られないものだ。残念ながらそれは間違いない。

今まで会社の仕事以外でいろいろ作ってきたけれど、それらはお金を産んだわけでもないし、コンペで賞をもらえたわけでもない。(とてもくやしい)

でも、何かを作って誰かに見せることで、見知らぬ土地で友人ができたし、ネットの向こう側とも交信できたし、見たことのないものをたくさん見ることができた。それに、何年か続けているうちに、幸いなことに、作ったものに興味を持ってくれる人から言葉がもらえるようになった。(とても嬉しい)

そういった体験を繰り返していると、(もしかして…自分には新しいものを作れる可能性があるんじゃないかな…?)と思えるときがある。もしかしたらそれは勘違いで、作ったものはゴミなのかもしれないけれど、そう思い込むこと、作り続け、発表し続けて、土俵の上に居続けることからしか、新しいもの、価値あるものは生まれない。

 

土俵から降りてたまるかと念じながら、たいしたことのないものを発信することを続けていこう。なぜならそれは、とても楽しいことだから。

 

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 年末に考えていた、「手紙として送れる音楽プレイヤー」のアイデア。埋もれる前に

 

文学のなかのもの

 

先週末、大学のころの友人と話していた時に、小説、特に戦前の文章の「ものを描写するテクニック」ってすごいよねという話題になった。夏目漱石が羊羹のことを書いた文章とかすごいよという話。あまり思い出せなくてもどかしい思いをしたので、家に帰ってからどんな書き方だったのか調べてみることにした。その一説は「草枕」の中にある。

夏目漱石 - 草枕

 

余はすべての菓子のうちでもっとも羊羹がだ。別段食いたくはないが、あの肌合らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。ことに青味を帯びた煉上げ方は、蝋石の雑種のようで、はなはだ見て心持ちがいい。のみならず青磁の皿に盛られた青い煉羊羹は、青磁のなかから今生れたようにつやつやして、思わず手を出してでて見たくなる。西洋の菓子で、これほど快感を与えるものは一つもない。クリームの色はちょっとかだが、少し重苦しい。ジェリは、一目宝石のように見えるが、ぶるぶるえて、羊羹ほどの重味がない。白砂糖と牛乳で五重の塔を作るに至っては、言語道断の沙汰である。

 

何かを描写するには観察力と表現力が必要だ。それは絵でも文章でも同じだと思う。文章の場合、表現力はボキャブラリーとかレトリックになるんだろう。このテキストでも、「羊羹をほめる」ということに対して、いくつもの魅力的な言葉が気持ちよく使われている。

 

・肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける

・玉と蝋石の雑種のよう

青磁の中から今生れたようにつやつやして

 

これだけ沢山の良い言葉が羊羹をほめるために繰り出されるのだ。Twitterばっかりやっている僕にはほとんど衝撃的です。「羊羹って洋菓子とは違った魅力があってめっちゃ良くない?」では伝わらない魅力を余すところなく伝えて余りある。表現が豊かすぎて、それについて何か書くのがばかばかしくなりますね。

(ちなみに、ちょっと調べたところ、文中の「青い煉羊羹」については、抹茶色の羊羹だったとか、茶色の羊羹の色の深さを「青」という言葉で表したとか諸説あるようだ。僕は後の方の解釈が好み)

 

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V&Aミュージアムで見た楽茶碗。全世界の焼き物が所狭しと並べられている中にすっと置かれていて、なんだかほっとした気持ちに

 

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日本的な美を書き表した表現についてもう一つ。僕は社会人になってから読んだのだが、建築、デザイン関係の学生の間ではとても有名な本だという、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」から、金色の使われ方についての一節。

谷崎潤一郎 陰翳礼讃

 

諸君はまたそう云う大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光りが届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が、幾間を隔てた遠い遠い庭の明りの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返しているのを見たことはないか。

その照り返しは、夕暮れの地平線のように、あたりの闇へ実に弱々しい金色の明りを投げているのであるが、私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う。そして、その前を通り過ぎながら幾度も振り返って見直すことがあるが、正面から側面の方へ歩を移すに随って、金地の紙の表面がゆっくりと大きく底光りする。決してちらちらと忙がしい瞬きをせず、巨人が顔色を変えるように、きらり、と、長い間を置いて光る。時とすると、たった今まで眠ったような鈍い反射をしていた梨地の金が、側面へ廻ると、燃え上るように耀やいているのを発見して、こんなに暗い所でどうしてこれだけの光線を集めることが出来たのかと、不思議に思う。

 

・遠い遠い庭の明かりの穂先

・ぽうっと夢のように照り返して

・沈痛な美しさ

・眠ったような鈍い反射

 

すごすぎやしませんか。眠ったような鈍い反射!ほの暗い畳敷きの部屋で金のふすまがわずかに光る様子が目に浮かぶようだ。

この段落よりも前に、「日本の蒔絵とかって結構派手な金色の使い方をしているけど、それが派手に見えるのはもともと想定されていたより明るく白い空間で見ているからで、本来は薄暗い部屋で見るのが一番綺麗である」というくだりがある。それを読んでから再度見てみると、よりここで描こうとしている美しさの正体に近づきやすいと思う。

一節の中で、個人的に最高だと思うのはこの部分。

 

・巨人が顔色を変えるように、きらり、と長い間を置いて光る

 

「、」の使い方含めて美しい。天才。

 

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近所の古い家の軒先から下がっていた照明。すりガラスのシェードが光を柔らかくしている

 

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最後に、宮沢賢治銀河鉄道の夜」から。列車で目を覚ましたばかりのジョバンニとカンパネルラが、窓の外に広がる天の川に目を奪われるシーン。

宮沢賢治 銀河鉄道の夜

 

その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどきの加減か、ちらちらいろのこまかな波をたてたり、のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。

 

・ガラスよりも水素よりもすきとおって

・紫いろのこまかな波をたてたり

・声もなくどんどん流れて行き

 

「天の川の水」は、上2つの例とは違って現実には存在しないものだけれど、この文章を読むと、それがどんなものか分かるような気がする。

透明度が高すぎて、光のゆらめきのように見える液体。空気のようにさらさらしているので、波立つことはあっても音を立てることはない水。水晶やシャボン玉のような、はかない紫色のハイライト。

 

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島根の海辺。これはこれで綺麗だけど、天の川の風景はきっとこういう色ではないよね

 

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優れた文章による描写を読むことで、自分が見過ごしていたものの美しさに改めて気づき、ものの見方の解像度をぐっと上げることができる。夏目漱石の羊羹語りを読んだ後に羊羹を食べれば、その魅力により深く迫ることができそうだ。味も変わって思えたりして。また、谷崎潤一郎に何かプロダクトを語らせたら、角Rの端に入るハイライトライン一つとってもかなり雄弁に描写してもらえそうだ。

 

自分の身を省みて、もののデザインをするときに、自らが作る形をこんなに細かく見ているだろうかと思う。案外、フィーリングで形状を決めたり、データやデザイン与件の成立しやすいようにしちゃってないだろうか。美しいレトリックで飾るまではゆかなくても、一つ一つの要素に意味を持たせているだろうか。正直、いままでの仕事ではそこまでのことはできていないんじゃないだろうか。

優れたデザイナーは、自分が今見るよりもよっぽど深く、詳細にものを観察し造形することができるのだろう。それこそ、夏目漱石谷崎潤一郎のように。

 

 

 

 

 

Oracleスピーカーのメイキング

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先日、友人の佐藤きみちゃんと難波さんの電子音楽ユニット「Mother Tereco」の1stアルバム「Oracle」がついに発売された。それに合わせた勝手な応援として、Mother Terecoのお二人に贈るつもりでこんなスピーカーを作ってみた。

 

ORACLE

ORACLE

 

 

Mother Terecoの音楽は、アナログシンセやフィールドレコーディングされた音が緻密に構成されていて、とても職人的でカッコいい。是非聴いてみてください。(勝手に広告)MVもソリッドで、彼らの世界観にばっちり合ってる。

 


Mother Tereco / Echo Love

 

せっかくなので、これをどうやって作ったかを書いてみたい。

 

以下のノウハウは僕が趣味の工作をする上で使っているものなので、プロのものではありません。でも、自分のアイデアを形にしてみたい学生さんとか、趣味のものづくりをされている方にはちょっと参考になると思う。

意外と安い金額で作ることができるので、興味のある方は自分でもオリジナルのプロダクトを作ってみてほしい!きっと楽しいよ。

 

 

1. 機能する部分をつくる

今回作ったのは、電気的にちょっと詳しく言うと「外部入力付きのアンプとスピーカーをつなげたもの」なので、まずはそれらをなんとかしてでっち上げることが必要になる。

とは言っても、僕は回路設計とか電気のことは門外漢なので、電気街に走りキットを購入してきた。大阪日本橋のデジットというお店で売っていた、「低電圧オーディオアンプ」というキット。1500円くらいだったと思う。

これがなかなかの優れもので、単三電池2本で音楽を聞くことができ、こんなに大きい音が出るのかと驚くほどしっかりした音が出る。音質は大したことないですが、そのあたりを追求しだすときりがないので、お財布事情との相談して決めてください。スピーカーは以前作ったラジオキットに付属していたものを分解して再利用することにした。

 

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中央の小さい基板が心臓部で、そこから電池やスピーカー、ボリュームなどにつながる

 

キットの部品点数が少ないので、はんだ付けが初めての人でも組み立てられると思う…多分。

これで音が出る状態になった!

 

 

2. 見た目のデザイン

最初のツイートリンクでも触れたように、今回制作したスピーカーのガワは、壊れた露出計の筐体を再利用している。

olympus emm-7 - Google 検索

だからオリジナルのデザインとは言えないかもしれないけど、ここでは自分の作った部分のことを簡単に説明します。

 

2-1 露出計を計測する

先ほどの露出計にはまっていた鉄板をとりはずし、その寸法を計る。定規などでももちろん良いけれど、もしあればノギスで測ったほうが正確な寸法が得られると思う。(工業製品の中には「36.5mm」とか、微妙な寸法がけっこう存在するし、正確に測らないと後で組み立てられない)

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測った寸法を無料かつ高性能の3DCADであるFusion360で図面化し、完成形をイメージしてみる。

これでひとまず大体の形はできた。

(ただ、上のパーツの曲げがこんなに綺麗にできないことを後に知ることとなる…!)

 

2-2 パネルのデザイン

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どんな見た目にしようかな〜と悩む。一番面白いプロセスかも

 

できたデータをFusionの図面機能で二次元図にして、さらにPDF書き出し機能を使ってIllustratorで読み込めるデータに加工する。

Illustratorで読み込んだあと、パネルの柄やスピーカーの穴の形など、どうすればカッコよく、使いにくくなくなるかを考えながら、部品や文字を配置していく。「Oracle」の文字は、手描きしたものを撮影して取り込み、上からなぞってパスデータにした。

スピーカーの周りには、Mother Terecoの音楽をイメージしつつ民族調の幾何学柄を配置。

 

2-3 試作品作り

金属パネルを作る際に、Illustratorで作ったパスデータを安く切ってくれる「きりいたドットコム」というサービスを使った。安いといっても、上下のパーツを切ってもらったら5000円くらいするので、できれば一発で完成品を作りたい。そのためには、試作品を作って見た目や機能を検証する必要がある!

 

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コピー用紙にプリントしたパネルの図を厚紙にスプレーのりで貼り付け、切り抜いて部品をのせてみる

 

ということで、作ったデータを出力しボール紙の簡易モデルを作ってみた。

それを露出計のガワにはめてみたのが下の写真の状態だ。

 

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けっこう完成品イメージできるのでは!?

 

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ボツ案。Braunの真似をしてシンプルイズベストなデザインにしてみようという出来心で作ったものですが、スカスカになってしまいシンプルの難しさを知る

 

試作品を作ってわかったことがあった。

2枚上の写真のようにスピーカーをむき出しにして配置すると、中音域がかなり強く出てしまい、耳が痛い感じの音質になってしまう。これを防ぐため、金属板の後ろにスピーカーを配置し、板に穴を開けてやることで、中音域をちょっと減らしてやる工夫をした。(そういえば、もともとのラジオキットでもそういう風になっていたな、と思い出したり)

 

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もうこれで良いのではと一瞬思わなくもない…でも紙なのでへなへななのです

 

その工夫を盛り込んだボール紙モデルがこちら。上のパーツと下のパーツの間にすき間をつくり、iPhoneを入れられるようにした。(この段階ではそうだった…)

 

 

2-4 アルミ板と印刷物の発注

さて、これで完成品を作るための素材となるデータが出揃った。つまり、

A アルミ板を切り抜くための図面データ

B 切った板に印刷するための版下データ

だ。

趣味でやってる人間としては、これらをできるだけお安く加工していただきたいところ。先程も少し触れたが、Aについては、「きりいたドットコム」 の、オーダーメイドカット加工を使った。

 

www.kiriita.com

 

Aiデータを送ると無料でいくらかかるかの見積もりをしてくれる。すごい!

これが見積もりの際に送ったデータ。

 

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 するとすぐに返信が来た。2つ合わせて、送料込みで5000円ちょいといったところ。僕はものすごく安いと思います。

ちなみに、素材は「アルミ5052」の1mmでお願いしています。

 ありがたいことに一部寸法がずれていた部分を指摘して頂いたので、データを修正して再度送る。入金手続きをしてから到着までは、土日を除いた営業日で3〜7日かかるとのことでしたが、今回は日曜に入金手続きをして、次の金曜には部品が届きました。やった!!

 

 

印刷する文字データは、2つに分けて発注をした。細かい文字など精密な部分は、プラモをやる人にはおなじみの「インスタントレタリング」と呼ばれるシールのようなもので、柄や大きい文字はシルク印刷で作ることに。

シルク印刷は値段も低く、乾けばこすれても剥がれにくいというメリットがあるが、素人クオリティでは10pt以下程度の細かい文字を印刷するのには向いていない。インレタ(インスタントレタリング)はめちゃくちゃ細かい文字や細い線も再現できるが、爪で引っかいただけで剥がれてしまうので、使う箇所は最小限にとどめたい。なので両者を組み合わせてみました。 

 

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ちょっと見えづらいけど、これがインレタ。検索すればネットで作ってくれるところが見つかります。こちらは2000円くらい。はく離紙の上に乗った状態で送られてくるので、切り取ってテープで位置決めをし、シートの上からこすって対象にくっつけます。

 

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 こちらが残りの印刷する版下。Illustratorで作っていたデータから、必要な部分のみを切り出してきたことが分かるでしょうか。

これはシルク印刷で表現できるので、関西のみなさまにはおなじみ…かもしれない、「レトロ印刷JAM」の製版サービスを利用。Tシャツやトートバッグなどを作るためのシルク簡易版を格安で作ってくれる。すごいぞ!

 

omise.jam-p.com

手元に以前使ったときのフレームがあったので、今回はSサイズの製版(データを元に印刷できる版をつくること)のみをお願いして、送料込みで2000円ちょい。安い!

こちらは一週間もかからず、データを出して決済したあと3日位で到着しました。

 

さて、ここまでやって、やっとすべての素材が手元に揃った。

組み立てるぞ!

 

 

3. 組み立て

大雑把に分けると、ここには以下のプロセスがある。

・パネルの塗装、印刷

・各パーツを組み立てる

順を追って説明します。

 

3-1 パネルの塗装、印刷

アルミ板の塗装はスプレー缶を使って簡単にする。

大きなゴミ袋を使って簡易塗装ブースを作り、その中で塗る。一度で塗ろうとすると必ず失敗するので、3回くらいに分けて薄く塗り重ねるのがコツ…だと思います。詳しく知りたい方は、フィギュアとかプラモ業界にはノウハウが山ほどあるのでそちらを当たってみてください。色はつや消しブラックを使用。

 

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パネルとネジが塗れました

 

そして、シルク印刷!

 

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刷れました

 

…シルクは一発勝負なので、やってる最中の写真が撮れなかった。

こう書くとサラッと成功しているみたいだけど、実際は一回ずれて失敗している。インキはTシャツなどに使うRISOの水性インキを使っているので、失敗してもすぐに水で流せばなかったことにできるのが良いですね。

 

インレタを貼って部品を装着し、下のパネルは完成!

 

 

3-2 上のパネルを曲げる

今回の鬼門となったパネルの曲げ。

最初は、簡単なガイドを使って以下のように曲げてみた…が、曲がり方が均一にならず、失敗。この写真ではきれいにできているようにみえるけどダメな仕上がりに。これではMother Terecoには渡せんぞ…!

 

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ということで、もっとしっかりした簡易ベンダーを作ってリトライ。😂

 

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 このあたりはまだノウハウとして確立できていないので詳しくは書きません。むしろもっとピシッと曲げられる方法を知りたいので教えてほしいです。

 

 

3-3 各パーツを組み立てる

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こうして

 

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 こう!

 

2枚目の写真をよく見て欲しいのだけれど、ボール紙試作のときにあったiPhone用のすき間がなくなってしまっている。これは、紙だとピシッと折れていたが 、1mmのアルミ板を人力で曲げた時にピシッと(角を小さくして)曲げることができなかったために起こった問題。

本来ならばさらにアルミ板を再発注して試行錯誤するべきなんだろうけど、お財布事情の問題と、なによりアルバム発売日までに完成しなくなるので今回はあきらめました。

 

あとは写真をキレイに撮って…完成!

Mother Terecoのお二人にも喜んでもらえて、ファンとしては大変光栄でした。

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記事の最初にも書きましたが、こういうDIYってなかなか面白いです。

一度でも何かを作ってみると、いつも使っている工業製品がいかによくできているかが分かったり、これも人間が作っているものなんだなあ、など様々な気付きがあるのでおすすめです。趣味としてもなかなか良いと思いますし!

 

もし、自分でも何か作ってみたという方がいましたら、教えていただけると嬉しいです!

 

「新版 論文の教室」はめっちゃ役に立つ本

戸田山和久「新版 論文の教室―レポートから卒論まで」を読み終えた。

昨年深圳でお会いした松田さんがTwitterでおすすめしており、面白そうだなと思って買ってみたのだけれど、これはものすごく役に立つ良い本だった。

 

新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)

新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)

 

 

僕にとって特に有用だったのは、パラグラフ・ライティングについての第7章と、分かりやすい文章と分かりにくい文章の違いについて触れた第8章。

特に第8章では、具体的にどんな書き方が分かりにくいのかの実例をあげながら、それらを改善するための方策をいちいち教えてくれる。この中で、「自分もやってる…」と一番ドキッとしたのが、「ゾンビ文」だ。

 

【例】実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるかどうかという点が異なる。

 

う…おかしい。おかしいけど、何がおかしいのか分からない。文章の意味がわかるかはさておき、何か違和感がある。でもなんだろう…?

著者によると、この違和感は、文章の主語と述語が対応していないことによって生まれている。つまり、

 

実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるか否かという点だ。」

 

 

だったら良いということ。確かに違和感がなくなっている。「AとBの違いは〜だ」という形にハマったことで、余計な引っかかりがなくすらっと読めるものになった。

「一見おかしくないようで、実はおかしな書き方」の文章を自分が書いているときって、古い油で揚げたフライを食べたときのような不快感があって気持ち悪かった。しかもその原因がわからないから余計に始末が悪い。だけど、気持ち悪さの原因を知ることができると、注意しながら書くことができて文が少しはましになる。

 

このように、豊富な実例を見ながら主人公の論文ヘタ夫くんと一緒に少しずつ歩みをすすめていくことで、一冊読み終えると自分もきれいな文を書けるような気になる。

…気になる、というだけで書けるようになったわけではないよ、ということも巻末に書かれていて、そうですねとしか言いようがないのですが。

 

それから、本のそこここからにじむ「文章を書くことに対する敬意」のようなものが印象深かった。この方は本当に文章を書くのが好きで、読むのが好きなのだなあと感じさせるポジティブな態度が一冊に通底していて、読んでいて気持ちがいい。

何かを批判する場面でも決して感情的にならずユーモアをもって行っている。批判するときって、大体その対象について腹が立っているので、うかつにすると建設的な批判じゃなくただの攻撃になる。それはだめだよと諭されているようで身につまされます。

 

こんな風に考えたい、書きたいなあと思わせられる、とても良い本でした。

文体がいわゆる「おやじ」っぽく親しみやすいので、読んでると移りそうになるのも…ヤバいっすね。

人ではない、人とコミュニケーションできるモノ(もののけデザイン1)

「人ではない、人とコミュニケーションできるモノ」がマイブームだ。とても面白いし、自分ができるかどうかはさておき、デザインしがいのあるテーマだと思う。

 

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人ならざるモノ

例えばそれはドラえもんポケモン初音ミクのようなキャラクターであったり、siri、ロボホンやユカイ工学のboccoのようなプロダクトであったりする。

人間そのものではないけれど、人間の言葉や心情を理解してコミュニケーションをとることができる、不思議なモノたち。その存在は多様で、時に可愛らしく時に恐ろしい。

彼らはフィクションとノンフィクションの境界に存在し、人間の想像力を動かして自分たちをデザインさせることで現実世界にアクセスする。言葉や行動で人間にはたらきかけ、生活を豊かにしたり混乱させたりする。妖怪や精霊と言われてきたものに近いような気もするし、少し違うようにも思う。

 

現在、人間の生活にはこのような存在が製品やサービスとして広く浸透しているわけではないけれど、先に挙げたsiriのような実例も存在する。そして、人工知能やロボティクスが急激に発展すると言われているこれから、そのようなモノはどんどん増え、発展していくだろう。人間は、「人間以外のモノ」との付き合い方を覚える必要があるし、またそれをデザインする機会を無数に与えられることになる。


マーク・ザッカーバーグによる人工知能 Jarvisの動画 こいつはかなり「人間ぽい」

 

 

まだ生まれていない、けれど想像されている

こうした「人ならざるモノ」は、先ほど書いた通り、まだプロダクトとしては開発の途上にあるようだ。しかし未来のユーザーである僕らは、その話を聞いただけで、あるいはプレゼンのビデオを見ただけで、「ふむふむ…なんとなく言いたいことは分かる…」と納得できる。なぜだろう?

それは、他の多くの技術と同じように、あらかじめ想像されたものだからだと僕は思う。人はドラえもんを作ることはまだ出来ないが、想像することはできるということだ。人間じゃないものとコミュニケーションすること、それらと一緒の生活を想像することは、太古の昔から行われてきたに違いない。世界中にある精霊や妖怪の伝説、おとぎ話は、人がそれを想像して形づくってきたという意味で、「人ならざるモノ」のデザインの試行と言えるかもしれない。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3f/Hyakki-Yagyo-Emaki_Tsukumogami_1.jpg

妖怪百鬼夜行絵巻(wikipediaより)👹

 

最近見たものの中では、Twitterで拡散されていた「はるさめごはん」さんのポケモン漫画に、「ポケモンとの共存」が描かれていて面白い。彼らが実生活のなかに現れたときの人間の変化や心の機微が柔らかいタッチで繊細に描写されており、興味深く、可愛くて心に残っている。ゲンガーかわいい…

 

 

 

 

幽霊ではなく、動物でもないなにか

今まで回りくどく「人ならざるモノ」なんて言い方をしてきたけれど、他によい言葉はないだろうか。妖怪、おばけ、モンスター、鬼… いろいろ表現はあるけど、個人的にはいまひとつしっくりこない。「物の怪」みたいな感じかなあ。どうだろう。

人間の幽霊や人っぽい神さま、それからペットというのも、人間に近い人ならざるモノではあるのだけれど、イメージしているものとはちょっと違う。「人間そっくり」の存在とコミュニケーションするマナーは対人間のそれとかなり似ているだろうし、動物とのコミュニケーションはめちゃくちゃ高度にはなりづらい。(動物好きの方、すみません)

 

www.goodspress.jp

 

このインタビューで触れられているみたいな、「コダマ的なもの」「現代の座敷童」というコンセプトが、そもそも僕がこうしたモノに興味をもったきっかけだ。親しみやすく、応用の可能性が広がるすばらしいアイデアだと思う。もしできることなら、これを起点にして、少しでも新しいものごとを考えさせていただきたいです。

 

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そんなわけで、「物の怪」についてもうちょっと考えてみたい。(なんと続きます!)

考えつつ書きたいなと思っているのは以下のようなことだ。

 

・日本の八百万的神さま/妖怪観とものづくりの関係(スプツニ子さん、市原えつこさんの作品をみる)

・人が物の怪に恋するがごとく感情移入することについて(初音ミク、UNDERTALE)

・人の想像力を使ってものを「リッチでスマートにみせかける」

・可愛らしさの分析と実装

 

今年のsaidoでの作品に向けて、これらの考えをベースにものをつくるところまでいけたら良いな。こんな本読んだら良いよとか、面白い資料がありましたら教えて頂けると嬉しいです。がんばるぞ!

「欲しいもの」を教えて

最近、欲しいものってある?

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僕は今使っているものより造形体積の大きい3Dプリンタと三次元加工ができるCNC切削機(できればローランドのやつ)、それからいい包丁が欲しい。

でも、これらはちょっと一般的な需要とは言えないかもしれない。それに、工業製品では欲しいものは少ないなあと思う。自分でプロダクトデザインをやっているのに、おかしな話だ。

 

ここのところずっと、「もの」にはまだ魅力があるのかどうか考えている。僕の親世代ではものすごく魅力があったらしい車、家電、オーディオみたいなプロダクトに、僕を含めた若い世代はあんまり魅力を感じていないみたいだ。

ひと昔前には、ものを買って使うことがとても良いこととされていて、みんながそれに従っていた。それが良いか悪いかは別にして、工業デザイナーはある意味花形で、ノリノリでいろんな製品をデザインしていた時代があった。そして、そこでつくられるものには一種神がかり的な魅力があったのだろう。

だけど、最近はまるで逆で、断捨離とかミニマルな生活ということばが流行し、もののない生活こそスマートで良いという論調が広がっている。確かに、最低限の家電と家具があって、ユニクロと無印で服を買って、あとはスマートフォンがあればそれでOKだと思う。僕がものづくりをする人間じゃなければそう思うだろう。でも作り手としてはちょっと寂しい。

 

いまの時代、「もの」は本当にもうコンテンツとしての魅力をもっていないのだろうか?トランペットが欲しくて欲しくてたまらない黒人の少年のように、ガラスケースの前に貼り付いて一日中見ているような、そんな魅力をもった存在はあるんだろうか?

そして、それが工業製品ではないとしたら、一体なんなのだろう?

 

もしあなたが何か強烈に欲しいものがあったら、ぜひ教えてください。

できたら、なぜそれが欲しいのかも。

 

(ハードディスクの肥やしになっていた文章を発掘したので、ちょっと手を加えて載せてみました)

シロメグリフを立体にしてみる

イラストレーターあけたらしろめにより無償配布されているフォント「シロメグリフ」が可愛いと評判なので、立体化してモビールにしてみた。

 

以下メイキングをのっけときますので、興味ある方は自分でつくってみてね!

 

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Illustratorでシロメグリフを入力し、アウトライン化して通常のパスにする

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一番外の輪郭の穴を埋め、シルエットのみのパスを作る

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作ったパスを3mmくらいオフセットする(ちなみに、この文字全体の大きさは横幅100mmちょいといったところです)

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アウトライン化したパスを型抜きし、図のようなデータにする

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このままだと目の中の部分が立体にしたときに落ちちゃうので、外側とつなげてやる(わかるかな?)

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あとはレーザーカットを外注するなり、3Dプリンタで出力するなり…

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厚みは1mmちょうどにしています。あんまり厚いと横から見たときに輪郭がつぶれるので。

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出力! 

 

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モビールって初めて作ったけど、思いの外上手くできた。金属棒はハンズで売ってる細い真鍮棒(ストックがあった)で、糸は普通の木綿糸。絹糸のほうが毛羽立たなくて良いかもしれません。 

ちなみに、文字はS A M U Iの5文字を作ったんだけど、モビールにはS A Mの3文字を使いました。毎日寒いですね。