ふしぎデザインブログ

デザイン事務所「ふしぎデザイン」の仕事やメイキングについて書くブログです。

久野染工場で有松絞りのヤバさを見た

先日、友人のデザインリサーチャー浅野翔くんに誘われて、彼が協力する絞り染めの会社、久野染工場さんを訪ねてきました。久野染工場は名古屋の有松にあり、地場産業である「有松絞り」をベースにさまざまな素材開発・生産を行う企業です。

実は有松を訪ねるのは2回目。去年は浅野くんの事務所見学+お祭りでしたが、今回は久野染工場の技術の一部を体験させてもらえました。これがものすごく面白かった!

 

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浅野くんは頭が切れて気のいいリサーチャーです

 

www.shibori-zome.com

 

 

久野染工場の絞り染め

まず案内していただいたのは、いままで製作したさまざまなテクスチャの生地がストックされている部屋。久野社長自らサンプルを解説して下さいました。

 いろいろな種類の模様、テクスチャの解説にはじまり、日本の絞り染めの歴史についてや、ハイブランドへの素材供給を数多く行い、常に新しいものを作る必要があることなど。また、単なる伝統産業ではなく、新しいビジネスを生み出したいという今後の展望についてもお伺いしました。

百聞は一見にしかずということで、見せて頂いたサンプルを写真でもご覧ください!

 

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伝統柄のひとつ、手蜘蛛絞り

 

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生地を絞り熱処理することで、柄に加えて形状を定着させることもできる

 

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今まで提供した生地サンプルがずらり!

 

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染色と脱色を組み合わせた複雑なパターン。自然物のようなランダムな表情

 

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無限に増殖する絞り染め柄のバリエーションを分類、整理したという豪華本「日本の手絞り」を解説してくれる久野社長。エネルギッシュで快活な方でした

 

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絞る際の下絵を生地に転写する型紙も見せていただきました

 

 

2つの絞り体験

サンプルを見せて頂いたあとに、実際の絞りの加工をワークショップ的に体験させていただきました!その様子をを振り返りつつ見ていきます。

 

①三角縛り(糸締め)

 

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1. 生地を三角形に小さく折り、タコ糸できつく縛って防染(染まらない部分を作ること)する

 

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2. 染料(今回は黄色)を調色し、鍋で一旦脱色した生地の上から染めていく

 

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3. 染料を溶け込ませ、沸騰させたお湯で染める

 

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4. 染めた生地を水で洗うと…

 

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5. 赤く見える部分がみるみる鮮やかなイエローに変色し、色が定着する

 

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6. 最後に大きな脱水機にかけると…

 

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7. 完成!今回浅野くんが招待したファッション系デザイナーの西端さん(右)とのツーショット。縛り方の違いで柄が全く違ったものに!

 

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生地をズームして見たところ。糸で縛られていた部分や、折り込まれて内側に入っていた部分はもとの紺色のままですが、外に出ていた部分には脱色→染めのプロセスで黄色が定着しています。規則的に生地を折っているので、柄は対称になっています

 

 

 

②ビー玉を使ったヒートセット 

 

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1. 加工前の細かいメッシュ状の生地。綿ポリエステル素材です

 

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2. 熱加工のための重要な道具、ビー玉

 

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3. ビー玉と細くて硬い糸を使って、生地を細かく絞っていきます。なんとなくソーセージを連想する?

 

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4. 絞ったあとの状態。この状態だとブドウの房のようにも見えます

 

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5. これをまるごと圧力鍋に入れ、水を入れて蒸してゆきます。 

 

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6. 数十分後鍋から取り出すと、フラットだった生地が丸みのある凸凹のついた表情に変化!こちらも、均一さとランダムさが共存する面白い質感です。

 

 

2つの製法を簡易的に体験して感じたのは、絞りのもつ可能性の幅広さ。色柄の変化だけでなく、波打たせたり、しわ、折り目をつけたりと、生地の表情をいかようにも変化させられるように感じました。また、防染の処理を少し変えるだけで染めの結果が変わるため、一点一点微妙に表情が違うのも面白かった。おそらく、大きいばらつきの許されない量産品では逆に難しいポイントになるのだろうと思います。(それを揃えるのも技術なのかも!)

 

 

先行製品開発と実験

最後に、久野染工場の社員の得能さんによる、実験的な素材開発の現場も拝見しました。久野染工場では主に布地に対する染めを行っていますが、得能さんは牛革を加工し、新しい質感の素材を生み出しています。

 

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染工場に務めながら、靴職人のスキルも持つ得能さん(左)。得能さんの他にも若いスタッフさんがおり、それぞれ違った開発を行っているようでした

 

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細かくしわを寄せて染めた革は、どこか生き物のような不思議な質感

 

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加工した革(下)と、それを靴の形にしたもの(上)。まだ検討中の段階だそうですが、靴の形がシンプルで質感の映えるプロトタイプです

 

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革を糸で防染し、2回に分けて染めることで奥行きのある表情を作り出したサンプル。これに限りませんが、絞り染めって今で言うところのジェネレーティブデザインですね

 

 

そんなわけで、久野染工場の技術の面白さを存分に味わった一日になりました。

浅野くんは今後、若いデザイナーと工場とがアーティスト・イン・レジデンス的にコラボレーションすることで製品開発をコンスタントに行うという構想も考え始めているようでした。染工場の中でも、ここまで技術とセンスが集積されたところはそうそうないと思いますし、工場とデザイナーのコラボレーションが加速する未来がとても楽しみ!

京都市立芸術大学で「メカニズム論」を担当しました

8月22日から24日の3日間、京都市立芸術大学の夏期集中講義の一つ「メカニズム論」を担当させて頂き、ワークショップを中心とした授業を行いました!

 

夏期集中講義はどの学科の学生でも選択できるということで、授業の目標を、「受講生が自分の作品/研究にメカニズムを取り入れようと思えること」に設定し、①メカニズムの基本を学ぶ  ②メカニズムを用いた作品(縁日の出店)をグループで制作  ③他の講義の受講生に体験してもらいフィードバックを得る  という3ステップを3日間に凝縮しました。

また、3日目にはPLEN Projectの柴田和弥さんをゲスト講師としてお招きし、メカニズムを使った自身の作品についてレクチャーして頂きました。ものすごく濃密な講義で面白かった…!

以下では、写真と動画を交えつつ、3日間のプログラムを振り返ってゆきます。

 

 

1日目:メカニズムの基礎を学ぶ

「そもそもなぜ美大でメカニズムを学ぶとよいのか」という話から始め、メカニズムを使ったアート作品や「ヘボコン」などの実例、ティンカリングやブリコラージュといった考え方を紹介しながら、手を動かして試行錯誤することや、制作に対するハードルを下げること、メカニズムを学ぶことの意義について触れました。

 

作る喜びと下手さを楽しむ「ヘボコン」  www.youtube.com

 

名和晃平の「MOMENT」は、振り子の動きを使って描くドローイング作品  vimeo.com

 

次にメカニズムの基礎となるねじやばね、歯車といった機械要素のはたらきを、3Dプリンタで作った模型の実演を交えつつ説明。ただしゃべるだけだと学生は寝るかなと思い(自分がそういう学生だったので)、授業はできるだけ実演やワークショップをベースにした内容にしました。

 

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久しぶりにFDMの3Dプリンタをフル活用し、各要素の動きがわかる模型を制作 

 

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プリントしている最中。3DプリンタはPrintrbot Simpleで、制御ソフトはultimaker cura 

 

最後に、ものをインタラクティブに動かすためのツール(micro:bitArduinoRaspberry Pi)と、その背後にある考え方を紹介しました。短期の授業のため深い内容まで触れられませんでしたが、自学することや創作のコミュニティに入ってみることの意義を、Maker Faire TokyoMaker Faire Hong kongでの作品を引用しつつ伝えました。

 

BBC micro:bitã®å³

https://microbit.org より引用 これは本当に使いやすいツール!

 

 

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Maker Faire Hong Kong 2018(上記3枚)

 

これらの内容の合間に、ペットボトルをリミックスして新しい道具を生み出す「ペットボトルハッキング」、日用品や家電のジャンク品を分解し、使われているメカニズムを分析する「メカニズムの観察」の2つのエクササイズを行いました。どちらも1時間程度の短いものでしたが、みんな面白い成果物を作っていてすごかった!

ここで考えたアイデアや分解したジャンクは、そのまま翌日の制作の素材になりました。

 

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ペットボトルの種類によるキャップの大きさの違いに着目し、切り取ったボトルでキャップを選別する、ユーモアのある作品「生茶 or evian」の実演

 

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ペットボトルを切ったり穴をあけたりすることで、いろいろな形や機能のものが生まれます

 

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各々が考えたアイデアをシートに記録してもらう。集まると壮観!(Photo: Kazuya Shibata)

 

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ビデオデッキは内部構造の複雑さといい、小さすぎないサイズといいとても良い教材

 

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動く象のおもちゃの中にはこんな骨格が…!

 

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スティック式掃除機の分解。蓄電池の扱いには気をつけましょう

 

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分解して観察したメカニズムをメモし、一覧する

 

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バラした部品は次の材料になるので、まとめておく

 

 

 

2日目:メカニズムを使った作品をつくる

1日目に学んだ内容とメモした構造、アイデアなどを活用し、4つのグループに分かれて「縁日の出し物」をテーマにチームで作品制作を行いました。

テーマを「縁日」にした理由は2つ。時期が夏で親しみやすく、楽しいものが作りやすいことと、ただメカニズムを作品に組み込むだけでなく、それをいかに演出するか、見せるかを合わせて考える制作ができることです。

材料は前日に分解したジャンク品と、百均で購入した日用品、段ボールなどの安い資材。「見た目のクオリティは度外視」「企画で悩まず、とにかく手を動かして考える」ことを念頭において、ヘボコン精神を発揮しつつ制作にあたりました。

 

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 大学の廃材置き場から、使えそうな材料をピックアップ

 

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講義用の机が一転作業机に

 

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机の上は素材だらけに

 

ここで気をつけてもらったのは、できるかぎり手を止めず、作りながら考えてもらうこと。この制作は1日で終わるもので、授業の評価にも関連させなかったので、とにかく試行錯誤し、決断のスピードを速くし、失敗もしてもらうことを意図しました。

当日は夜に台風も来るということで早く授業を切り上げる必要があり、それもあってハイペースに制作が進みました!

 

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レコードを発見、何かに使えるかな…

 

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ゴムひもを使ったピンポン玉の発射台を作っています

 

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できてきてる!速い!

 

 

3日目:作品を体験してもらい、フィードバックを得る

最終日。この日のイベントは大きく2つ。1つ目が、ゲスト講師のPLEN Project柴田和弥さんによるプレゼンテーションです。

業務でロボット開発を行い、ガチの趣味の制作でもハイレベルに可動する作品を作る柴田さんの考え方やメイキングに触れてもらうことで、メカニズムを学んだ先にあるものづくりを意識してもらえると考え、登壇いただきました。

 

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「変態になる」→他人の目を気にせず、とことんまで突き詰めることをハイテンションに語ってくれました。最高!

 

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PLEN Projectの業務でもワークショップを多々行うとのことで、プレゼンがうまかった…!

 

 

 柴田さんの代表作「デルモンテ」は動画も交えて紹介。制作中の新作のメイキングも!

 

そして、2つめのイベントが、作った作品を体験してもらうこと!各チーム無事に作品が完成し、部屋を片付けて、他の集中講座を受け終えた学生さんをお客さんとして呼び込みます。来場者には「一番面白かった作品」と「一番メカがすごかった作品」に投票してもらい、作品を評価します。

地道な呼び込み(一人ずつ声をかける…笑)の効果もあって、たくさんのお客さんにご来場いただけました!

 

 

youtu.be

 

 

以下、各チームの作品の紹介です。

 

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Aチーム:「ピタゴラおみくじ」

その名の通り、スタート地点に置いたボールが転がり、どのルートに分岐するかによって今日の運勢を占う作品。ボールが転がる面白さに加え、後ろのメンバーが楽しく囃してくれるという魅力もありました。「最も面白かった作品」で最高評価。

 

 

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Bチーム:「ピンポンハイウェイ」

現在上映中の映画から名前をもじった的当てゲーム。ゴムひもを使った手前のキャノンを操作し、高得点の的を狙います。ペンギンを始めとした海の生き物をモチーフに使ったグラフィック、メカニズムの完成度ともにハイクオリティ。「メカニズムがすごかった作品」で最高評価、かつ総合得点でも一番でした!

 

 

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Cチーム:「手塚医院の恐怖」

見た目から異彩を放つ、お化け屋敷のような出し物。椅子を使ったコントローラーとひもを操作し、クレーンゲームの要領でドライバーを動かし、手のイラストの上に落として手術を行います。看板や服装などビジュアル面も良い仕上がりで、メンバー同士が終始楽しそうに制作をしていたのが印象的なチームでした。

 

 

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Dチーム:「はらへりサファリパーク」

観察のエクササイズで分解した象のぬいぐるみをメインのモチーフとして使った作品。ラクロスのスティックのような棒を使い、ピンポン玉を象のおなか目指して落とす、イライラ棒のような要素もあるゲーム。制作が進むにつれゲームの内容が固まってきて「手を動かして考える」ことを最も体現したチームでした。

 

 

どのチームも短い時間でアイデア出しから制作までこなしてすごかった!ワークショップの仕掛けにもっと工夫が必要なポイントもありましたが、抜群の制作力で対応してくれました。

 

来場者がはけたあと、作品の片付けと表彰、講義のまとめを行って授業は終了。

冒頭に書いた通り、メカニズムを自分の作品に取り入れて、作品をもっと面白くしてくれる学生がいたらいいなあと思います。人に何かを伝えたり、教えたりするのは難しいし手間もかかるけど、本気でやれば何かしらは伝わるんじゃないかな、と思わせてくれる3日間でした。

京都市立芸術大学に呼んでくださったプロダクトデザイン専攻の高井先生と牛田先生、PLEN Projectの柴田さん、何より受講生の皆さん、ありがとうございました!

 

 

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香港PolyU Designの卒制展を見てきた | Hong kong PolyU Design's Annual show was interesting

 

先日、仕事の合間を縫って香港に3泊4日でリサーチ出張をしてきました。

いろいろと得るものが多く面白かったが、一本の文章で書こうと思うと長過ぎるので、見学したメイカーフェア香港の会場(PolyU)で同時開催されていたPolyU Designの卒業制作展について書きます。卒制展があるよと教えてくれた、Winstars Enterprise HKのCindyさんたちありがとうございます!(カタコト英語版もあるよ!)

 

In this July,  I went Hong Kong and does design research.

It was really interesting for me and has some topic like Nico-Tech STEM tour and Maker faire Hong kong, but they are too long to write in single post. so I write about PolyU design's annual exhibition. (Thank you for told me about design exhibition, Cindy at Winsters Enterprise HK!)

 

 

香港PolyU Designとは? | What is Hong kong PolyU Design?

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まず建物がザハ(補修中?)

 

PolyU Designは、香港理工大学のデザイン学部(学科?)の通称。1964年からの歴史があり、QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門では24番目にランクしている有名校のようだ。学科はプロダクトデザインを始め、コミュニケーションデザイン、広告デザイン、デジタルメディア、インテリア、デザインマネジメントなど多岐にわたる。

 

PolyU Design is  design department in Hong kong Polytechnic University. It started in 1964, and placed in 24th in QS university ranking (Art & design).  Majors are Product design, Communication design, Advertising desgn, Digital media, Interior design design management and so on.

 

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建物入り口のスロープ。Jockey club innovation towerというのは建物の名前

 

www.sd.polyu.edu.hk

 

まずびっくりしたのが、学校の建物がザハ・ハディドのデザインだということ。学部全体がザハ建築の中にあるってちょっとすごくないか。建物は2013年竣工とのことで非常に新しい。中を歩いているとき、そういえばこの建物、デザイン情報サイトとかで見たことあるな!と発見して面白かった。

 

First, I was surprised at building of PolyU design. the building was designed by Zaha Hadid. It is amazing! Building was so new and I noticed that I've seen the interior of this architecture on design news website

 

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この角度、なんとなく見覚えないですか?

 

 

展示全体の印象 | About whole exhibition

10F以上ある建物を縦横に使った展示構成で、各階ごとに学科が分かれているようだった。例えば、プロダクトデザインが3Fと4F、コミュニケーションデザインが5F…というような(実際の階数メモってなかったので、この通りではないです)。

ざっと回ってみた印象は「実用的なデザイン」が多く、非常にクオリティが高いということ。

プロダクト、コミュニケーション(UIデザインの提案が多かった)で特に顕著に感じたのだが、「すぐ売れそうな即戦力のデザイン」が目立ち、見応えがあった。

 

Annual exhibition was so large, and seems to separeted by field of design.

ex) one floor is for product design, other is for communication... (but I don't remenber about right floor).

Seeing through the exhibition, I thought that the design works are so practical, and has high quality.

Especially in product design and communication design, many works has good quality and has commercial potential. 

 

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プロダクトデザインの展示室

 

例えばこちらの提案。コミュニケーションデザインのもので、香港のまちなかに設置する案内看板システムなのだが、このまま行政にプレゼンに持っていけそうなクオリティだ。 

 

For example, this proposal about communication design is sign design in Hong kong.

It consisting of a sign and design system of that. It is very well-designed.

 

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同じくコミュニケーションデザインの作品。子育てをする両親のための支援アプリのデザイン。UIのグラフィックやイラスト、UXの提案パネルなど総じてこなれている。

 

This is also proposal about communication design. It is smartphone app for parents struggling for care their child. UI graphic design, illustration, and description panel for UX, all kind of things seems to be well-done.

 

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PolyUを卒業してメーカーやデザイン事務所に就職したら、即戦力で働けそうな印象の作品が目についた。

 

I think that graduate of PolyU will be good designer for the manufacturer and design farm at fast.

 

 

プロダクトデザインの気になった作品 | Remarkable works in product design

 

ここからは自分の専門領域である、プロダクトデザインの卒業制作を見ていきます。

まず1つ目が、Lee, Hau Ying TobyさんによるCushyという提案。

介護施設でケアワーカーが使うことを想定した車椅子で、スライドする座面によって、ベッドからかかえあげることなくお年寄りを移乗させることができるというもの。ケアワーカーとお年寄りの両方の負担を軽減することができる。

 

I introduce 3 more works from major of product design. (It is my own major)

First is "Cushy" by Lee, Hau Ying Toby. It is wheelchair which can used in nursing home by care workers. This product can move elderly person from bed to wheelchair, without holding by care worker. It can reduce risk both of care worker and elderly person.

 

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まずこの実物大のモックアップがよくできている!優しげな造形のまとまりもそうだが、座面部分は浮き輪のようにふくらませたビニール素材でできていたり、操作部のリモコンまで作り込んであったりと、綿密に考えられた内容。

 

At first, I was surprised about quality of mock up! styling looks soft, chair is made from material like balloon (and it looks real).  Also controller is well-designed.

 

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パネルもこなれていて参考になる

 

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移乗の手順(右)

 

移乗用の製品としては、車椅子にベッドから人を移すための担架のような製品や、人を釣り上げるリフトのようなものが既に存在する。しかし、それらは見た目も無骨なものが多いし、サイズもかなり大きい。

介護用品は未だデザインが介入できておらず、裏を返せば「デザインにできることが多い」分野なのだろう。この程度のサイズ感だったら取り回しも楽だし、使う人、使われる人にとっても変なプレッシャーがなくて良さそう。

当たり前の話だが、日本のみならず香港でも介護は社会の課題なのだと感じた。

 

There are some kind of this product on the market. but there are too large and not so stylish. I thought that product for nursing elderly people are one of blue ocean of industrial design. I like the feeling and size of this prototype. It will be nice between care worker and elderly person.

 

 

続いては、Ying Chuさんによる作品「Treasure Block」。

 

Next is "Treasure Block" by Ying Chu.

 

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こちらも上の作品同様、シニア層に向けての提案。ベッドや机、ベンチなどからなる家具のシリーズで、ユーザーの好みの変化や年齢によるニーズの変化に対応して形態を変えることができる。

 

This work is also for senior people. proposal is the collection of furniture, which like bed, bench, and table. It can change forms to fit user needs.

 

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レンダリングもうまい!

 

こちらがその変化の内容。1つの家具がベンチになったり、ベッドになったり、小上がりの座敷になったりする。

ここでもその実装力というか、実現力に驚いた。このサイズの家具を業者さんに発注して作っているのだ。(大きいものをきれいに作るのはお金と手間がかかるので、地味にすごいことなのです)さらに機構を示すミニチュアのマケットまである。上図左にレンダリング画像があるところを見ると、3Dデータからそのまま形を起こしてくれる業者さんがいるのだろう。ここまで作って見せられると説得力が違う!

 

This is how changes. One furniture transform into bench, bed, and little TATAMI floor.

It was very nice work! The one prototype is real-scale, and another is miniture for explaining the movement. Through two prototypes, proposal looks so real.

 

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 両手に乗るくらいのサイズ。かわいい

 

 

 最後に紹介するのは、Sharon Leungさんの作品「TRANSYWARE」。

機内食用の食器の提案で、機内スタッフと旅客のよいユーザクスペリエンスのためにデザインされたものだそう。(Leungさんのwebサイトより

 

Last work is "TRANSYWARE" by Sharon Leung.

It is a series of tableware for aircraft. It was designed for good user experience of passenger and flight attendant. (from the website of designer)

 

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大きくRをとった四角形を基調に手堅くまとまったスタイリングが魅力的だが、この作品の展示でもっとも惹きつけられたのはそのデザインプロセスだ。どんな食器を用意したらよいか、製品に関わる人にはどんな人がいるのかなど、単なる形状デザインの提案にとどまらない深いリサーチがたまらない。

 

I like the shape of this product, which consising from rounded rectangle. and I flet that the remarkable element of this proposal is design process.

I was surprised about the deep design resarch about user, tableware, and shape.

 

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さらにすごかったのが、展示台の脇にちょこんと置いてあったリサーチブック。提案を制作するにあたって行ったリサーチやプロトタイピングの過程を冊子にまとめてあるのだが、本も内容もとにかく分厚い。 機内食や飛行機内のサービスのリサーチから、手を動かして検証した内容まで、抜かりがない。

 

Plus, designer also made a book of reserch. It is full of trial and error of designer, and contents is really bold.

 

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完成品以前のモックアップのスタディがあったり 

 

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手描きのスケッチはまた別のファイルにまとめてある。 この分量、見習わねば

 

紹介させてもらった3作品どれも、手を動かすことを厭わず検証がなされていて、見ていてとても気持ちが良かった。こんな学生がいたら企業の人は欲しいだろうな〜とも思いました。

 

I felt that these three works has same point. The proposal made by tough trial and error.

I think that the designer in the manufacturer will welcome to the PolyU design student.

  

 

商品化プロジェクトSDWorks | Commerscialize project SDWorks

 

卒業制作展とはちょっと違うが、面白いプロジェクトがあったので合わせて紹介します。

この「SDWorks」というプロジェクトは、学生のアイデアを実際に量産し、販売するという産学連携プラットフォームのようだ。商業的にもポテンシャルのある学生のアイデアが、課題の終了時に終わってしまうのはもったいないという考えから生まれた企画だという。(SDWorksのwebサイトより

品目的にはアクセサリーなどの小物が多いが、中にはデジタル時計のような精密機器もあり、これをどうやって実現したのかと思ってしまうようなハイクオリティなデザインのものも多い。

 

I introduce more one topic of PolyU Design.

This platfoam named "SDWorks" aims to produce student's idea and sell into real market. The origin of idea is some great proposal of student, but that ends when course is completed.

Products of SDWorks are accessories, watches, and so on.  It was interesting that some design is very high quality, and that has digital mechanism like watch with LCD.

 

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作品を常設展示するギャラリーが建物の1Fにある

 

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上の画像の製品もSDWorksのプロジェクトから生み出されたもの。奥のリング状の腕時計のようなものは「Timeless」という名前で、時計に見えるが時間を見る機能を持っていないアクセサリー。時計の持つファッション性だけを引き出すことに着目した、時間を忘れるためのプロダクトのようだ。コンセプトも面白いが、仕上げや色も美しい。

 

The product above is also part of collection of SDWorks. product looks like ring-shape watch is named "Timeless". It is actually just fashion accessory. but it is use potential of watch as fashion item. I like the concept of it, and CMF is also nice.

 

 

手前のものは「Mirror Watch」という名前の製品で、普段はミラー状の文字盤に、側面のボタンを押したときだけ時刻が表示されるというもの。これもとてもカッコいい!SDWorksのwebサイトによると、Red dot design awardを受賞している。マジかよ…!

 

Product which is in front of the picture is "Mirror watch". This is also proposal about time. In usual, the face is this watch tells no information. but user can indicate the time through push button of it. This is also cool! The product wins at Red dot design award. Awesome!

 

 

 

香港や深センの技術力があるからこそこのようなプラットフォームが成り立っているのだと想像するが、ここまで高度にそれを成り立たせるには、学生のアイデア・デザイン力だけではなく、それをアシストする教師の企画力も相当必要なのだろうなあと想像させられた。(詳しく聞いてみたい!)また、PolyU designの建物内には、スタートアップが多数入居しているエリアがあったり、東京にもあるマテリアルコネクションのライブラリーがあったりと、非常に充実した環境のようだった。

 

I wonder The power of SDWorks is supported by factory in Hong kong or Shenzhen. but unique point is not only the manufacturing, but also Planning ability of teachers. (Of course effort of student is most valuable piece!)

And I saw another Facility in PolyU design. Design department has some room for startups in Hong kong, and also has material library which supported by Material Connection. It seems to be very useful place for student.

 

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Photo by Toshiro Mori 

 

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Photo by Toshiro Mori  

 

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展示を見て考えたこと | What I thought by seeing exhibition

 

偶然案内していただいた展示だったが、非常におもしろく見て回ることができた。(他の作品も合わせた写真アルバムはこちら↓)

上でも繰り返したことだが、特にプロダクトデザインの展示では、「ものづくりに直結する、即戦力のデザイン」が目立つという印象を強く受けた。香港や中国本土でのプロダクトデザインに対する需要を受けてのものなのだろう。

 

I really enjoyed the exhibition. (Here is the whole photo album of exhibition, please check it) 

I felt that the PolyU Design is so practical. I wonder that is for demand of product designer in Hong kong or China mainland.

 

photos.app.goo.gl

 

 

強く思ったのは、日本の学生にも、香港の卒展をぜひ見てほしいということ。所変われば品変わる、ということを身をもって感じられると思うし、非常に刺激的だろう。

また、香港の学生にとっても、日本の学生のデザイン提案を見ることで得るものがあると思う。

展示会場に学生さんの姿があまりなかったので叶わなかったが、次に訪れるときにはぜひ学生さんと話がしてみたいし、香港の若いデザイナーと学び合う関係を作りたい。

 

I strongly thought that more and more Japanese designers and student have to see the Hong kong student's work. It will be very interesting and sorrounding of designer will changes their theme.

This time, l couldn't talk with student about their design, but next time I visit PolyU design, I want to talk with them and want to learn about design each other.

 

最近のGoogleデザインが面白い

去年発売されてからすぐにGoogle Homeを買って、おもしろく使っていることもあり、Googleのプロダクトデザインが気になっていた。なんだか最近、すごく洗練されてお洒落になった気がする… ということで、ミラノで見た展示をきっかけにいろいろと調べてみました。今後の電子機器デザインを考える上で、Googleの戦略は非常に参考になるのではと思います!

(この文章では、「デザイン」という言葉を、「スタイリングやカラーリングなど、狭義のプロダクトデザイン」という意味で使っています)

 

 

ミラノサローネでの展示「Softwear」

先日、ミラノサローネに初出展するため出張に行きました。色々な展示を見る機会があったのだけれど、個人的にGoogleの展示がヒットでした。

まずびっくりしたのが、ミラノサローネGoogleの展示があるのか!ということ。Googleってテック企業の代表だし、インテリアの色が濃いミラノサローネというより、SXSWとかCESとかに出してるイメージが強い(両方行ったことないけれども)。

 

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展示会場はこぢんまりしており、他の大きい展示(moooi、HAY、Louis Vuittonなど)に比べるとコンパクトだったが、Googleのような大きな企業が小さいギャラリーで展示をするというのが、なんとなくフレンドリーに感じて面白かった。

 

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展示のテーマは「Softwear」。

展示内容はテキスタイル作家Kiki van Ejikの作品を展示する前半部と、Google HomeDaydream viewPixelといった製品を、それぞれ観葉植物や陶器の器と取り合わせて展示した後半部に分かれる。面白かったポイントは、タイトルにもあるようにソフトな布素材に対する強い関心と、その背後に見える制作者の意図だ。

 

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先程挙げた3つのプロダクトのうち2つ、HomeとDaydream viewは外装のデザインにメッシュの生地を使っている。その色や質感、仕上げの処理は非常にハイレベルで、三次曲面を多用したDaydream viewにおいても、布地特有のもたっとした印象を感じさせず、シャキッとした形状にまとまり、親しみのあるものになっている。

作家のタペストリーは、多色の糸を使ったざくざくとした織りで、工業製品というよりも工芸的なニュアンスのものだった。これがうまく製品を補完し、表現したい世界観を表しているように感じた。製品展示においても、ハイテクな機能をもった製品が、添えられた器物のスタイリングによって、一つの風景を作り出している。

 

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また、映像やパンフレットで見られる、Google製品とともに暮す人たちのビジュアルも印象的で、示唆に富んだものだった。

 

https://cdn.wallpaper.com/main/styles/fp_922x565/s3/googleuntitled-2.jpg

 wallpaper.comの記事より引用

 

「Softwear」は展示ディレクターであるトレンドのスペシャリストLi Edelkoortによる造語のようで、1998年と2018年にディレクターによって書かれた2つの文章が会場入口にプリントされていた。非常に興味深い内容だったので、その一部を抜粋して引用してみます。

 

1998年

Software is material that informs a computer.

(Softwareはコンピュータの性質を伝える生地)

Softwear is textile that forms a lifestyle.

(Softwearはライフスタイルをかたちづくる織物)

 

2018年

Software is increasingly intelligent and intuitive.

(Softwareはますます賢く、直感的になる)

Softwear has become the design of existense.

(Softwearは存在のデザインになる)

 

 

おそらく、今回の企画はもともとあった1998年のテキストにインスパイアされて作られ、2018年のテキストは展示に寄せて書かれたものなのだろう。プロダクトが「どのように働くか」ではなく、「どのように人と共存するか」にフォーカスし、Googleの描くビジョンを伝える、とてもユニークで面白い展示だった。 

 

 

Googleのプロダクトデザインのねらい

さて、ここからはwebの記事などをもとにした僕の推測になるのだが、Googleのデザインについて思ったことを書いてみようと思う。

 

まず、デジタル機器にテキスタイルを用いる手法そのものは、それだけで世界初、超新鮮というわけではない。例えば、北欧のオーデイオ機器メーカーVifaやB&O Playの製品には数年前から効果的に布地や革ひも、木材が使われていた。

 

https://www.vifa.dk/ImageGen.ashx?constrain=true&crop=resize&width=960&compression=90&image=/media/2011/helsinki-willow-green-21977-300dpi.jpg

vifa.dkより引用 確か生地はKvadratのものだったはず

 

なのでGoogleのデザインは、まったく新しいテイストを生み出したというよりも、すでに芽が出ていたテイストを引用し、うまく発展させたものだといえるだろう。(パクりだといいたいわけではありません。念のため)

 

むしろ重要なのはGoogleが、今も世界中のプロダクトが追随するAppleテイストとの決別、差別化を打ち出したという点のように思う。

Appleのデザインは、個人的なイメージだが「テクノロジーの結晶を形にしたもの」だと感じる。黒くてつやっとして薄い板状のiPhoneは、2001年宇宙の旅に登場する「モノリス」のようだし、まるで一枚の板から削り出したかのようなMacbookの佇まいは、ユーザーのテンションをぐっと上げる。人間の意識を刺激し、進化を促すようなデザインだ。

これに対してGoogleのデザインは、「テクノロジーを意識させないための形」のように見えた。Google Homeはコンピュータというよりも器物的なフォルムで、インテリアに自然に溶け込む。スマートフォンPixelも、布地こそ使っていないものの背面はグレイッシュなツートンで、画面を伏せて置くと「スマホとしての存在感」がなくなる。肩肘張らずに使える、人間らしい生活を促すようなデザインだと言える。

 

数年前、まだGoogleスマホNexusという名前だったころのデザインは、言ってしまえばAppleテイストの追随だったように思う。そこから数年でライバルと差別化し、独自路線を打ち出したのはものすごい。最近だいぶGoogleのイメージお洒落になったよなと思っていた矢先のこの展示だったので、余計にそう思ったのかもしれない。 

 

 

デザイン会社が買収されているという話

話は変わるが、6月に第二回The Guild勉強会というイベントに参加してきた。

(その時とったメモはこちら

テック・ビジネス・デザインに精通した研究者兼クリエイター、ジョン・マエダが発表したメガトレンド資料「Design in tech 2018」を読み解くというテーマだったのだが、その中で面白い話があった。世界の有名デザイン会社が、テック企業やコンサル会社、金融会社に買収されているというのだ。

調べてみると、Googleもいくつかのデザイン会社を買収し、急ごしらえ的にプロダクトデザインの力を高めたようだ。例えば、Mike & Maaikeという企業は、もともと独立したデザイン事務所だったが、2011年にGoogleに買収されたようだ。

 

http://www.mikeandmaaike.com/ 

 

この経緯をまとめた、彼ら自身による文章がブログに上がっている。

大きな企業の傘下に入って働くことの大変さだったり、人間が判断するプロダクトデザインの決定プロセスと、データによって判断できるソフトウェアデザインの決定プロセスの違いなど、面白いトピックが多いが、英語かつ長いのでまだ読み切れておらず…あとでじっくり読んでみます。

medium.com

 

Mike & Maaikeのwebサイトを見ると、Google Homeの前身となったと思われる、Android Homeというプロトタイプのデザインが公開されている。(このときはまだ「モノリス」デザインだ)僕が調べた中では、Google Homeを誰がデザインしたかは公開されていないが、もしかするとこの人たちの仕事なんじゃないだろうか。ハードウェアデザインの力が足りなかったら買ってきたらええやん、というのは、日本人からすると相当大胆に感じる。また、こういう情報を外に出すのが、オープンソースの文化で育ったGoogleらしさなのだろうか。

 

 

Googleのハードウェアデザインのリーダー、Ivy Ross

Googleの新しいデザインを見る上で外せない人物がいる。現Googleのハードウェアデザインチームのリーダー、Ivy Rossという女性だ。

 

この方はもともとジュエリーデザイナーだったようで、GapやKalvan Kleinといったファッション企業、Swatchや北米ディズニーストアなど、多くの企業と業界を経験してきたらしい。(同Design Milkの記事より)

Softwear展でも印象的だった、テキスタイルを使った人間味あるデザインを主導し、デザインチームと新しいデザイン言語(一つ一つのディテールではなく、製品群全体のデザインを規定するルールのようなもの)を編み上げていったのだろう。

 

Design Milkの記事より引用

(余談だが、この写真に倉本仁さんデザインのメッシュトレーが見える。Googleは各国のデザイナーをリサーチしているのだろう)

 

引用を続けるが「Human, optimistic, and bold」というキーワードを設定し、スマートフォンVRヘッドセット、スマートスピーカー、イヤホンといった多ジャンルの製品群を、一つにまとめあげた。僕はこのデザイン言語とコンセプト、すごく好きです。

 

https://design-milk.com/images/2018/01/Google-FAMILY_COLOR_1.jpg

Design Milkの記事より引用

 

 

これからの電子機器のデザイン

この10年間、電子機器のデザインはAppleの主導のもとにあったといってよいだろう。 iPodiPhone、そしてiPadをインターフェースとした製品システムは名実ともに世界を変えた。 ただ、その影響力の大きさゆえに、ほとんどのプロダクトデザイナーは、Appleのテイストを真似していればよいという消極的な態度になってしまったとも言えるだろう。これは自分自身についてもそう思う。

だから、北欧メーカーからGoogleにつながる、新しいデザイン言語の流れ が非常に新鮮に見える。これ以外にももっと新しいものが生まれて来てほしいし、自分がそういう仕事に関われたら最高だ。

 

様々なデザイン、思想、生活スタイルがある。そして、多くの企業が多種のデザインを提供し、より多くの人が好きなものを選べるようになる。

これはあまりにナイーブな考え方かもしれないが、Googleの展示と最近のデザインは、そういう未来が来たらいいよね、と思わせるものだった。

デザインって良くも悪くもなるよねという話

最近、STS科学技術社会論)やバイオテクノロジーのELSI(倫理的・法的・社会的問題)と呼ばれる分野の研究をしている方々とお仕事で関わることが多い。

 

ããã ã¯ãªã ã¤ãªã  Gene Drives Elastic Future

ゆらぐ はなす つなぐ Gene Drives Elastic Future | ふしぎデザイン

 

分野の名前が難しいので想像しづらいかもしれないが、要するに「科学技術を社会になじむようにする方法を考える」分野だ。(僕の理解です。実際は違うかも)

 

――― 

 

バイオテクノロジーはあらゆる科学技術の中でも特に影響力が大きい分野で、もたらされる恩恵が大きい反面色々と問題を抱えている。

わかりやすい例を挙げると、人間の受精卵を操作して子どもを好きなように作ってよいのか?あるいは、ある病気を媒介する動物を、病気の撲滅を目的として絶滅させてよいのか?といった具合だ。

これらの問いは決してSFの世界の話ではなく、既に生み出された技術によって実行可能なものだ。ただ、それには「本当に実行してよいのか」「実行するとして、誰がどのように社会実装するのか」という議論が必要不可欠になってくる。

 

www.ted.com

 

この議論が十分になされないうちに実行されてしまったり、あるいは本当は禁止すべきような危険な技術が実用化されてしまったりすると、バイオテクノロジーから本来得られるメリットよりも大きいデメリットを受けることになる。研究者は知的好奇心のままに技術開発をするし(デザイナーと一緒ですね)、企業は営利追求のためなら手段を選ばないこともある。さらには国や自治体が常に正しい判断を下せるとも限らない。

そこで、技術開発をどのように舵取りし、いかに実社会に実装するかを考え、いろいろなポジションの人々と一緒になって議論する役割が必要になってくるというわけだ。

 

――― 

 

ちょっと話は変わるが、上のような分野にかかわる仕事をしているため、最近はデザイナーにも倫理的な観点が必要だと思うようになった。

プロダクトデザインは、ある製品の外観を決めることで、その企業の顔を魅力的に演出することができる。グラフィックデザインは様々な手法を用いて、ある情報を魅力的に伝達することができる。UI、UXの分野も言わずもがなだ。

 

例えば、チームの一員としてデザイナーの能力をうまく活かすことができれば、こんな良いことができるだろう。

・アピールしたいものをよく見せ、魅力を引き出すこと

・伝えたい情報を正確に伝え、誤解のないように工夫すること

・人の生活を豊かにする、役に立つものを生み出すこと

 

 ただし、その力を活かす方向はきちんと考える必要がある。

デザインの力を活かすことによって、こんなこともできてしまうからだ。

 ・本来は良くないものをごまかし、よく見せること

・伝えたくない情報を隠し、ミスリードを誘うこと

 ・人の生活に害を与えてしまう、攻撃的なものを生み出すこと

 

で、多分、悪意あるコンセプトのもとにデザインの知恵を使っちゃったら、「とても健康的で美味しそうに見える毒」みたいなものなんて、朝飯前に作れてしまうだろう。それも、それが毒であるということは誰にも気づけないようなものを。

 

ここで言いたいのは「デザイナーは悪の手先だ」とかではなく、「自分は毒を作れることを知っている」ことはとても大事ということだ。

デザインは、楽しい夢を描き、実現することのできるすばらしい職業だと思うし、できるなら自分もそうありたいと思う。ただ、他のすべての職能と同じで、デザインの技術は良くも悪くも使える可能性がある、ということは忘れたくない。

(誰かにとっての良い夢は、ほかの誰かにとっての悪夢かもしれない)

 

僕らはどんどん新しい夢を描いてゆきたいし、それが良い夢であるようにがんばる。

いまいちまとまりのない文章になってしまったけれど、本当にそう思っています。

 

https://lh3.googleusercontent.com/x2g4fDMkPWWEdMRtGJTg9Sh-9BdbLSjgJ2i8YrCGTDZnM8DnGjLB-VtIp-IjWzwtCFbP6gbByb4yMoyXgrkvJtCM53SGNn89AybGpvv88qX2_VTN10XsuhXHLU6jevzV5wYTTFH05MOaypyUloZ7a9MmBhLcHHe8G4_6D5UuHnvZyfurbGIEbE3-9gpQqoz6hMT4EPqkju6eDAwhSaWs1bTeUAUlxazOpiBGXxhkQXCQM6rVgqduMIyMjEOFPVZ4LaCMGaV3DWYyjcs4m9fwg0vBR6dIYDVbA8Uiwof6-0MIJQuz_j8joC68H-FJc5QQBl2enwJf_KSO1bVDpU1HRx1JqnWFeaX9BwzczJ2zgaGhty7-F1WpbptcMKf23o1W8HjLQlELe_d184wq1NTKU3GkCzXmaX3-8gWoZAX9DVgbWKMOB_XnWoHV_igCwNgjk56GqCqblAukmSZCIaw-Cr-0ibU5Vga8KBxJGW2J6E_ycSVJaJK0U6DzkTRscalVQI6c4ggHeCVGKrTtr0qeImue38eHBk9SNguAUsWeFjynwIDnZXSbhSuHCnoIsLICf_pang8YYZq4lJzbjaTaziT0aixn8DGRR8WUpigj=w2114-h1400-no

全然関係ないけど、いま葉山でやってるブルーノ・ムナーリ展めちゃめちゃ良かったです

Nintendo Laboのデザインが好きだ

本日発表された「Nintendo Labo」すでに各所で話題沸騰ですが、僕もいちデザイナーとして大感動してしまったので、そのデザインについて書きたいと思います。

 

www.nintendo.co.jp

 

見た目のデザインについて

Nintendo Laboのインタラクション、コンセプトの面白さ、技術的な工夫についてはもう各所で語られているだろうと思うのでここでは割愛し、「見た目」のデザインについて書きます。

 

https://www.nintendo.co.jp/labo/kit/img/box_variety.jpg

任天堂公式webサイトより引用

 

DIYプロダクトの文脈(色とグラフィックのデザイン)

まず目を引くのが、段ボールを使ったtoy-conのスタイルです。これは今までにある「DIYプロダクト」のスタイルを踏襲したものに見えます。例えばkano computerTeenage engineeringのPOシリーズGoogle AIY Toolkitなど。

 

https://static.kano.me/assets/images/regional-homepage/product-listing/computer-kit-complete-shop.png

kano webサイトより引用

 

https://www.teenageengineering.com/_img/568be7c3bc9fa103000ab82d_512.jpg

teenage engineering webサイトから引用

 

 

どの例も基板そのものや段ボールの素材感をあえてそのまま生かし、ポップな色を加えることで魅力を生み出しています。Nintendo Laboでも、段ボールとその折り目を素材のアクセントとしてとらえ、そこにswitch本体のカラーリングにプラスαしたアクセントカラーを入れることで、楽しそう、かつちょっとクールな実験器具のような雰囲気を作っています。

ものの重要な要素であるグラフィックも、toy-conだけではなくパッケージ、webサイトまで統一されて製品のクオリティアップに貢献しています。可愛い…

「デコる」のはmt.のマスキングテープ的なお洒落DIYの影響が見て取れるし、このデザインは、現在ある「クリエイティブなDIYプロダクトのスタイル」をいいとこ取りしたものだと言えます。

そして「nintendo switchをセンサーとして使い、ハックする」というまさに任天堂にしかできないアイデアが乗ることで強いオリジナリティを生み出しています。

 

 

自分でも作れちゃいそうな感じ(かたちのデザイン)

Toy-conの形状も、まるで3Dプリンタで作ったような「各要素が大きい、低解像度なかたち」にして簡単に組めるようになっていながら、細かく設計された段ボールの折り目を形のアクセントにすることで、ただの紙工作に見えないハイクオリティな印象になっています。また、段ボールの耳や切り欠きなどの形状をシリーズで揃え、かなりバラバラな形状をしている各Toy-conの統一感を確保しています。

 

かたちのデザインでもっとも良いな〜と思ったのは「自分でも作れちゃいそうな感じがする」こと。公式webサイトにあるように、「ちょっとこわれても、自分で直せちゃう」と思えるような、良い意味でラフなデザインだと感じます。

 

www.youtube.com

任天堂webサイトより引用

 

これって実は難しいことで、普通デザイナーは「もっと緻密な、隅々まで考え尽くされたかたち」を作りたくなっちゃうと思う。そこでグッと踏みとどまり、ユーザー目線に立ち「自分でも作れたり直せたりしそうなかたち」を設計する。なぜなら、それがもっともこの商品に適切な最適解であるから、と判断できる点に、任天堂のデザイン力をひしひしと感じます。

 

実際に「ちょっとこわれても、自分で直せちゃう」かどうかはわかりません。でも、盛大に壊したToy-conを、お父さんお母さんと子どもが 泣き叫びながら(大げさかも)直す風景って、なんだか微笑ましくて良いんじゃないかな。

「自分でも作れそう」だからと言って、「自分でも作れる」とは限らない。おそらく多数の子どもユーザーは、その難しさに音をあげてしまうと思います。でも、そこで火がつく子も絶対にたくさんいるはず。もし新しい遊びを自作できなくても、「世の中のものってよくできてるんだな」と思うだけでも、重要な学びになると思います。

 

  

まとめ

・先ほどswitchを予約しました。

・Nintendo Labの実物を早く手にとってみたいです。

・こういう夢があって社会的インパクトのあるデザイン、ものすごく憧れます!!

 

YCAM COOKHACKワークショップのこと

もう一ヶ月近く以前になるが、仕事でお手伝いしていた山口情報芸術センターのワークショップ「COOKHACK」第一弾が開講された。(対象年齢は小学校4年生以上)

このワークショップは、山口情報芸術センター内部の研究開発チームであるYCAMインターラボが企画・運営するもので、今回ふしぎデザインは企画のアシストと小道具を中心としたデザインでご協力させていただいた。

学生時代に子ども相手のワークショップをしたことはあったけれど、だいぶ久しぶりだったので新鮮で楽しかった!

 

以下、記録も兼ねてどんな内容のものだったかを簡単に書いておきます。

 

 

ワークショップは二部に分かれている。前半は多数の調味料を味わい分け、お題と同じ味を調合し作り出すアイスブレイク「ワンプッシュスープ」を行い、「味」の世界の奥深さを体験してもらう。

 

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ちょっと見えづらいですが、ボトルのラベルも作りました

 

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味見タイム!たくさんの調味料を味見する機会って、意外とないのでは?

 

そして、後半ではいよいよ「COOKHACK」プログラムを体験する。野菜や果物をキューブ状に切り、それを生で味わったのち複数の方法と時間で調理。さらにそれを味わい、記録し、最終的には自分のオリジナルレシピを作ることで味の変化と調理の関係を探っていく。

 

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最初に生の食材を味わってみるステップ。ブロッコリーって生だとどんな味がするんだろう?

 

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味の変化を記録するシート。最初の案ではテーブルクロスのような大きなものでしたが、実験を繰り返してスリムに

 

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自分のオリジナルレシピを記録したシート。調理→試食→記録→創作までを一回で行う濃いプログラム

 

この構成にたどり着くまでに、実際のワークショップのような実験を繰り返しながら試行錯誤を繰り返した。

 

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実験の様子。蒸す、揚げる、焼くといった調理法を並行して行うためにはどうしたら良いかを検証する

 

どのように調理を体験してもらったら、面倒でなく、かつ楽しくなるのか。(→食材を切る工程は予め済ませておき、調理のプロセスに集中してもらう)あるいは、どのように記録したら味の変化をわかってもらえるか。(レーダーチャートで「甘味」「苦味」などを記録し、グラフの形の変化を見て取れるようにする)など、実験を通して少しずつ内容を洗練させていった。

今回のワークショップにおけるYCAM企画スタッフの中心である石川さんはUXの分野に通じており「いかにユーザーに良い体験をしてもらうか」を核に据えてプログラムを設計していく手法がとても参考になった。ワークショップをひとつのカスタマージャーニーと捉えて考え、プログラムの各段階ではタッチポイントとしての実践がある。そうやって整理することで、ワークショップの流れを俯瞰し構築しやすくなるのだ。

 

先に写真を挙げた各小道具も、情報の記録の仕方はどうするか、似たシートがお互い混ざらないようにするにはどうしたら良いか、どの程度のサイズにしたら使いやすい(見やすい)か、 など様々な要素を取り込みデザインを進めていった。

このような場合、YCAMのある山口とふしぎデザインのある東京で分かれて作業をするよりも、顔を突き合わせて一気に進めた方がうまくいく。そのため作業期間中に滞在制作をセッティングして頂き、その間はYCAMに出勤するような形でデザイン制作を行った。(余談ですが、温泉や美味しい店など色々とご案内頂いたのだった。ありがとうございます!)

 

それから、ワークショップの顔となるロゴマークも制作を行った。こちらは東京のグラフィックデザイン事務所Direction Qの沼本さんにお願いし、料理と科学のイメージを盛り込んだものを作って頂いた。調整もかなりお願いしましたが、おかげさまでとても良いものができました!

 

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 調理器具のイラストを組み込んだタイポグラフィと、化学式をイメージした背景のパターンを作っていただきました。

 

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制作頂いたロゴはワークショップ内プレゼン資料とレシピの表紙に使用しました!

 

ワークショップ当日、実際に子どもたちと一緒にプログラムを進めてみると、企画チームのデザインの工程を再確認できるようでとても面白かった。食材に触る瞬間や食べてみるときなどに参加者のギアが上がる瞬間があって、その時間に立ち会えてとても嬉しかった。

 

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 ひらめいた!

 

ワークショップを行う上では、山口で活動する料理研究家の津田多江子さん、またYCAMのサポートをする山口大学の学生スタッフ(ファシリア)の小林くん、野口くんにも大変お世話になりました。

何かを作って、それを体験してもらう(すると嬉しい)というのは、プロダクトだけじゃなくてワークショップも同じなのだと感じました。このワークショップの参加者が料理をするときに、その面白さを思い出してくれたら嬉しいです。

 

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YCAMがつくる教育プログラム「未来の山口の授業β」のひとつであるCOOKHACKは、今後もプログラムを洗練させながら継続してゆくとのことです。大学や企業と協力して行うことも考えて展開したいそうなので、いずれあなたの町にもCOOKHACKがやってくる日がくるかも!

 

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皆さまお疲れさまでした!

 

 Photo by 田邉アツシ