ふしぎデザインブログ

デザイン事務所「ふしぎデザイン」の仕事やメイキングについて書くブログです。

YCAM COOKHACKワークショップのこと

もう一ヶ月近く以前になるが、仕事でお手伝いしていた山口情報芸術センターのワークショップ「COOKHACK」第一弾が開講された。(対象年齢は小学校4年生以上)

このワークショップは、山口情報芸術センター内部の研究開発チームであるYCAMインターラボが企画・運営するもので、今回ふしぎデザインは企画のアシストと小道具を中心としたデザインでご協力させていただいた。

学生時代に子ども相手のワークショップをしたことはあったけれど、だいぶ久しぶりだったので新鮮で楽しかった!

 

以下、記録も兼ねてどんな内容のものだったかを簡単に書いておきます。

 

 

ワークショップは二部に分かれている。前半は多数の調味料を味わい分け、お題と同じ味を調合し作り出すアイスブレイク「ワンプッシュスープ」を行い、「味」の世界の奥深さを体験してもらう。

 

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ちょっと見えづらいですが、ボトルのラベルも作りました

 

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味見タイム!たくさんの調味料を味見する機会って、意外とないのでは?

 

そして、後半ではいよいよ「COOKHACK」プログラムを体験する。野菜や果物をキューブ状に切り、それを生で味わったのち複数の方法と時間で調理。さらにそれを味わい、記録し、最終的には自分のオリジナルレシピを作ることで味の変化と調理の関係を探っていく。

 

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最初に生の食材を味わってみるステップ。ブロッコリーって生だとどんな味がするんだろう?

 

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味の変化を記録するシート。最初の案ではテーブルクロスのような大きなものでしたが、実験を繰り返してスリムに

 

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自分のオリジナルレシピを記録したシート。調理→試食→記録→創作までを一回で行う濃いプログラム

 

この構成にたどり着くまでに、実際のワークショップのような実験を繰り返しながら試行錯誤を繰り返した。

 

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実験の様子。蒸す、揚げる、焼くといった調理法を並行して行うためにはどうしたら良いかを検証する

 

どのように調理を体験してもらったら、面倒でなく、かつ楽しくなるのか。(→食材を切る工程は予め済ませておき、調理のプロセスに集中してもらう)あるいは、どのように記録したら味の変化をわかってもらえるか。(レーダーチャートで「甘味」「苦味」などを記録し、グラフの形の変化を見て取れるようにする)など、実験を通して少しずつ内容を洗練させていった。

今回のワークショップにおけるYCAM企画スタッフの中心である石川さんはUXの分野に通じており「いかにユーザーに良い体験をしてもらうか」を核に据えてプログラムを設計していく手法がとても参考になった。ワークショップをひとつのカスタマージャーニーと捉えて考え、プログラムの各段階ではタッチポイントとしての実践がある。そうやって整理することで、ワークショップの流れを俯瞰し構築しやすくなるのだ。

 

先に写真を挙げた各小道具も、情報の記録の仕方はどうするか、似たシートがお互い混ざらないようにするにはどうしたら良いか、どの程度のサイズにしたら使いやすい(見やすい)か、 など様々な要素を取り込みデザインを進めていった。

このような場合、YCAMのある山口とふしぎデザインのある東京で分かれて作業をするよりも、顔を突き合わせて一気に進めた方がうまくいく。そのため作業期間中に滞在制作をセッティングして頂き、その間はYCAMに出勤するような形でデザイン制作を行った。(余談ですが、温泉や美味しい店など色々とご案内頂いたのだった。ありがとうございます!)

 

それから、ワークショップの顔となるロゴマークも制作を行った。こちらは東京のグラフィックデザイン事務所Direction Qの沼本さんにお願いし、料理と科学のイメージを盛り込んだものを作って頂いた。調整もかなりお願いしましたが、おかげさまでとても良いものができました!

 

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 調理器具のイラストを組み込んだタイポグラフィと、化学式をイメージした背景のパターンを作っていただきました。

 

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制作頂いたロゴはワークショップ内プレゼン資料とレシピの表紙に使用しました!

 

ワークショップ当日、実際に子どもたちと一緒にプログラムを進めてみると、企画チームのデザインの工程を再確認できるようでとても面白かった。食材に触る瞬間や食べてみるときなどに参加者のギアが上がる瞬間があって、その時間に立ち会えてとても嬉しかった。

 

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 ひらめいた!

 

ワークショップを行う上では、山口で活動する料理研究家の津田多江子さん、またYCAMのサポートをする山口大学の学生スタッフ(ファシリア)の小林くん、野口くんにも大変お世話になりました。

何かを作って、それを体験してもらう(すると嬉しい)というのは、プロダクトだけじゃなくてワークショップも同じなのだと感じました。このワークショップの参加者が料理をするときに、その面白さを思い出してくれたら嬉しいです。

 

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YCAMがつくる教育プログラム「未来の山口の授業β」のひとつであるCOOKHACKは、今後もプログラムを洗練させながら継続してゆくとのことです。大学や企業と協力して行うことも考えて展開したいそうなので、いずれあなたの町にもCOOKHACKがやってくる日がくるかも!

 

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皆さまお疲れさまでした!

 

 Photo by 田邉アツシ