Oracleスピーカーのメイキング
ひょんなことから手に入ったかなりレトロな露出計(https://t.co/FeYTNYupwk)の筐体をリメイクしてスピーカーにしています。スピーカーとアンプはキットで、グラフィックと前面パネルはオリジナルです pic.twitter.com/mF5HTJo5SK
— 秋山慶太 (@keita_ak) 2017年2月8日
先日、友人の佐藤きみちゃんと難波さんの電子音楽ユニット「Mother Tereco」の1stアルバム「Oracle」がついに発売された。それに合わせた勝手な応援として、Mother Terecoのお二人に贈るつもりでこんなスピーカーを作ってみた。
Mother Terecoの音楽は、アナログシンセやフィールドレコーディングされた音が緻密に構成されていて、とても職人的でカッコいい。是非聴いてみてください。(勝手に広告)MVもソリッドで、彼らの世界観にばっちり合ってる。
せっかくなので、これをどうやって作ったかを書いてみたい。
以下のノウハウは僕が趣味の工作をする上で使っているものなので、プロのものではありません。でも、自分のアイデアを形にしてみたい学生さんとか、趣味のものづくりをされている方にはちょっと参考になると思う。
意外と安い金額で作ることができるので、興味のある方は自分でもオリジナルのプロダクトを作ってみてほしい!きっと楽しいよ。
1. 機能する部分をつくる
今回作ったのは、電気的にちょっと詳しく言うと「外部入力付きのアンプとスピーカーをつなげたもの」なので、まずはそれらをなんとかしてでっち上げることが必要になる。
とは言っても、僕は回路設計とか電気のことは門外漢なので、電気街に走りキットを購入してきた。大阪日本橋のデジットというお店で売っていた、「低電圧オーディオアンプ」というキット。1500円くらいだったと思う。
これがなかなかの優れもので、単三電池2本で音楽を聞くことができ、こんなに大きい音が出るのかと驚くほどしっかりした音が出る。音質は大したことないですが、そのあたりを追求しだすときりがないので、お財布事情との相談して決めてください。スピーカーは以前作ったラジオキットに付属していたものを分解して再利用することにした。
中央の小さい基板が心臓部で、そこから電池やスピーカー、ボリュームなどにつながる
キットの部品点数が少ないので、はんだ付けが初めての人でも組み立てられると思う…多分。
これで音が出る状態になった!
2. 見た目のデザイン
最初のツイートリンクでも触れたように、今回制作したスピーカーのガワは、壊れた露出計の筐体を再利用している。
だからオリジナルのデザインとは言えないかもしれないけど、ここでは自分の作った部分のことを簡単に説明します。
2-1 露出計を計測する
先ほどの露出計にはまっていた鉄板をとりはずし、その寸法を計る。定規などでももちろん良いけれど、もしあればノギスで測ったほうが正確な寸法が得られると思う。(工業製品の中には「36.5mm」とか、微妙な寸法がけっこう存在するし、正確に測らないと後で組み立てられない)
測った寸法を無料かつ高性能の3DCADであるFusion360で図面化し、完成形をイメージしてみる。
これでひとまず大体の形はできた。
(ただ、上のパーツの曲げがこんなに綺麗にできないことを後に知ることとなる…!)
2-2 パネルのデザイン
どんな見た目にしようかな〜と悩む。一番面白いプロセスかも
できたデータをFusionの図面機能で二次元図にして、さらにPDF書き出し機能を使ってIllustratorで読み込めるデータに加工する。
Illustratorで読み込んだあと、パネルの柄やスピーカーの穴の形など、どうすればカッコよく、使いにくくなくなるかを考えながら、部品や文字を配置していく。「Oracle」の文字は、手描きしたものを撮影して取り込み、上からなぞってパスデータにした。
スピーカーの周りには、Mother Terecoの音楽をイメージしつつ民族調の幾何学柄を配置。
2-3 試作品作り
金属パネルを作る際に、Illustratorで作ったパスデータを安く切ってくれる「きりいたドットコム」というサービスを使った。安いといっても、上下のパーツを切ってもらったら5000円くらいするので、できれば一発で完成品を作りたい。そのためには、試作品を作って見た目や機能を検証する必要がある!
コピー用紙にプリントしたパネルの図を厚紙にスプレーのりで貼り付け、切り抜いて部品をのせてみる
ということで、作ったデータを出力しボール紙の簡易モデルを作ってみた。
それを露出計のガワにはめてみたのが下の写真の状態だ。
けっこう完成品イメージできるのでは!?
ボツ案。Braunの真似をしてシンプルイズベストなデザインにしてみようという出来心で作ったものですが、スカスカになってしまいシンプルの難しさを知る
試作品を作ってわかったことがあった。
2枚上の写真のようにスピーカーをむき出しにして配置すると、中音域がかなり強く出てしまい、耳が痛い感じの音質になってしまう。これを防ぐため、金属板の後ろにスピーカーを配置し、板に穴を開けてやることで、中音域をちょっと減らしてやる工夫をした。(そういえば、もともとのラジオキットでもそういう風になっていたな、と思い出したり)
もうこれで良いのではと一瞬思わなくもない…でも紙なのでへなへななのです
その工夫を盛り込んだボール紙モデルがこちら。上のパーツと下のパーツの間にすき間をつくり、iPhoneを入れられるようにした。(この段階ではそうだった…)
2-4 アルミ板と印刷物の発注
さて、これで完成品を作るための素材となるデータが出揃った。つまり、
A アルミ板を切り抜くための図面データ
B 切った板に印刷するための版下データ
だ。
趣味でやってる人間としては、これらをできるだけお安く加工していただきたいところ。先程も少し触れたが、Aについては、「きりいたドットコム」 の、オーダーメイドカット加工を使った。
Aiデータを送ると無料でいくらかかるかの見積もりをしてくれる。すごい!
これが見積もりの際に送ったデータ。
するとすぐに返信が来た。2つ合わせて、送料込みで5000円ちょいといったところ。僕はものすごく安いと思います。
ちなみに、素材は「アルミ5052」の1mmでお願いしています。
ありがたいことに一部寸法がずれていた部分を指摘して頂いたので、データを修正して再度送る。入金手続きをしてから到着までは、土日を除いた営業日で3〜7日かかるとのことでしたが、今回は日曜に入金手続きをして、次の金曜には部品が届きました。やった!!
印刷する文字データは、2つに分けて発注をした。細かい文字など精密な部分は、プラモをやる人にはおなじみの「インスタントレタリング」と呼ばれるシールのようなもので、柄や大きい文字はシルク印刷で作ることに。
シルク印刷は値段も低く、乾けばこすれても剥がれにくいというメリットがあるが、素人クオリティでは10pt以下程度の細かい文字を印刷するのには向いていない。インレタ(インスタントレタリング)はめちゃくちゃ細かい文字や細い線も再現できるが、爪で引っかいただけで剥がれてしまうので、使う箇所は最小限にとどめたい。なので両者を組み合わせてみました。
ちょっと見えづらいけど、これがインレタ。検索すればネットで作ってくれるところが見つかります。こちらは2000円くらい。はく離紙の上に乗った状態で送られてくるので、切り取ってテープで位置決めをし、シートの上からこすって対象にくっつけます。
こちらが残りの印刷する版下。Illustratorで作っていたデータから、必要な部分のみを切り出してきたことが分かるでしょうか。
これはシルク印刷で表現できるので、関西のみなさまにはおなじみ…かもしれない、「レトロ印刷JAM」の製版サービスを利用。Tシャツやトートバッグなどを作るためのシルク簡易版を格安で作ってくれる。すごいぞ!
手元に以前使ったときのフレームがあったので、今回はSサイズの製版(データを元に印刷できる版をつくること)のみをお願いして、送料込みで2000円ちょい。安い!
こちらは一週間もかからず、データを出して決済したあと3日位で到着しました。
さて、ここまでやって、やっとすべての素材が手元に揃った。
組み立てるぞ!
3. 組み立て
大雑把に分けると、ここには以下のプロセスがある。
・パネルの塗装、印刷
・各パーツを組み立てる
順を追って説明します。
3-1 パネルの塗装、印刷
アルミ板の塗装はスプレー缶を使って簡単にする。
大きなゴミ袋を使って簡易塗装ブースを作り、その中で塗る。一度で塗ろうとすると必ず失敗するので、3回くらいに分けて薄く塗り重ねるのがコツ…だと思います。詳しく知りたい方は、フィギュアとかプラモ業界にはノウハウが山ほどあるのでそちらを当たってみてください。色はつや消しブラックを使用。
パネルとネジが塗れました
そして、シルク印刷!
刷れました
…シルクは一発勝負なので、やってる最中の写真が撮れなかった。
こう書くとサラッと成功しているみたいだけど、実際は一回ずれて失敗している。インキはTシャツなどに使うRISOの水性インキを使っているので、失敗してもすぐに水で流せばなかったことにできるのが良いですね。
インレタを貼って部品を装着し、下のパネルは完成!
3-2 上のパネルを曲げる
今回の鬼門となったパネルの曲げ。
最初は、簡単なガイドを使って以下のように曲げてみた…が、曲がり方が均一にならず、失敗。この写真ではきれいにできているようにみえるけどダメな仕上がりに。これではMother Terecoには渡せんぞ…!
ということで、もっとしっかりした簡易ベンダーを作ってリトライ。😂
悔しいのでホームセンターに走り簡易的なベンダーを作りました(実際はこれでもあまりうまくいかなくて、さらに改良した) pic.twitter.com/qddukAuZ6F
— 秋山慶太 (@keita_ak) 2017年1月28日
このあたりはまだノウハウとして確立できていないので詳しくは書きません。むしろもっとピシッと曲げられる方法を知りたいので教えてほしいです。
3-3 各パーツを組み立てる
こうして
こう!
2枚目の写真をよく見て欲しいのだけれど、ボール紙試作のときにあったiPhone用のすき間がなくなってしまっている。これは、紙だとピシッと折れていたが 、1mmのアルミ板を人力で曲げた時にピシッと(角を小さくして)曲げることができなかったために起こった問題。
本来ならばさらにアルミ板を再発注して試行錯誤するべきなんだろうけど、お財布事情の問題と、なによりアルバム発売日までに完成しなくなるので今回はあきらめました。
あとは写真をキレイに撮って…完成!
Mother Terecoのお二人にも喜んでもらえて、ファンとしては大変光栄でした。
記事の最初にも書きましたが、こういうDIYってなかなか面白いです。
一度でも何かを作ってみると、いつも使っている工業製品がいかによくできているかが分かったり、これも人間が作っているものなんだなあ、など様々な気付きがあるのでおすすめです。趣味としてもなかなか良いと思いますし!
もし、自分でも何か作ってみたという方がいましたら、教えていただけると嬉しいです!
「新版 論文の教室」はめっちゃ役に立つ本
戸田山和久「新版 論文の教室―レポートから卒論まで」を読み終えた。
昨年深圳でお会いした松田さんがTwitterでおすすめしており、面白そうだなと思って買ってみたのだけれど、これはものすごく役に立つ良い本だった。
新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)
- 作者: 戸田山和久
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 11人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
僕にとって特に有用だったのは、パラグラフ・ライティングについての第7章と、分かりやすい文章と分かりにくい文章の違いについて触れた第8章。
特に第8章では、具体的にどんな書き方が分かりにくいのかの実例をあげながら、それらを改善するための方策をいちいち教えてくれる。この中で、「自分もやってる…」と一番ドキッとしたのが、「ゾンビ文」だ。
【例】実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるかどうかという点が異なる。
う…おかしい。おかしいけど、何がおかしいのか分からない。文章の意味がわかるかはさておき、何か違和感がある。でもなんだろう…?
著者によると、この違和感は、文章の主語と述語が対応していないことによって生まれている。つまり、
「実在論と観念論の違いは、人間の認識活動から独立して存在する実在を認めるか否かという点だ。」
だったら良いということ。確かに違和感がなくなっている。「AとBの違いは〜だ」という形にハマったことで、余計な引っかかりがなくすらっと読めるものになった。
「一見おかしくないようで、実はおかしな書き方」の文章を自分が書いているときって、古い油で揚げたフライを食べたときのような不快感があって気持ち悪かった。しかもその原因がわからないから余計に始末が悪い。だけど、気持ち悪さの原因を知ることができると、注意しながら書くことができて文が少しはましになる。
このように、豊富な実例を見ながら主人公の論文ヘタ夫くんと一緒に少しずつ歩みをすすめていくことで、一冊読み終えると自分もきれいな文を書けるような気になる。
…気になる、というだけで書けるようになったわけではないよ、ということも巻末に書かれていて、そうですねとしか言いようがないのですが。
それから、本のそこここからにじむ「文章を書くことに対する敬意」のようなものが印象深かった。この方は本当に文章を書くのが好きで、読むのが好きなのだなあと感じさせるポジティブな態度が一冊に通底していて、読んでいて気持ちがいい。
何かを批判する場面でも決して感情的にならずユーモアをもって行っている。批判するときって、大体その対象について腹が立っているので、うかつにすると建設的な批判じゃなくただの攻撃になる。それはだめだよと諭されているようで身につまされます。
こんな風に考えたい、書きたいなあと思わせられる、とても良い本でした。
文体がいわゆる「おやじ」っぽく親しみやすいので、読んでると移りそうになるのも…ヤバいっすね。
人ではない、人とコミュニケーションできるモノ(もののけデザイン1)
「人ではない、人とコミュニケーションできるモノ」がマイブームだ。とても面白いし、自分ができるかどうかはさておき、デザインしがいのあるテーマだと思う。
人ならざるモノ
例えばそれはドラえもん、ポケモン、初音ミクのようなキャラクターであったり、siri、ロボホンやユカイ工学のboccoのようなプロダクトであったりする。
人間そのものではないけれど、人間の言葉や心情を理解してコミュニケーションをとることができる、不思議なモノたち。その存在は多様で、時に可愛らしく時に恐ろしい。
彼らはフィクションとノンフィクションの境界に存在し、人間の想像力を動かして自分たちをデザインさせることで現実世界にアクセスする。言葉や行動で人間にはたらきかけ、生活を豊かにしたり混乱させたりする。妖怪や精霊と言われてきたものに近いような気もするし、少し違うようにも思う。
現在、人間の生活にはこのような存在が製品やサービスとして広く浸透しているわけではないけれど、先に挙げたsiriのような実例も存在する。そして、人工知能やロボティクスが急激に発展すると言われているこれから、そのようなモノはどんどん増え、発展していくだろう。人間は、「人間以外のモノ」との付き合い方を覚える必要があるし、またそれをデザインする機会を無数に与えられることになる。
マーク・ザッカーバーグによる人工知能 Jarvisの動画 こいつはかなり「人間ぽい」
まだ生まれていない、けれど想像されている
こうした「人ならざるモノ」は、先ほど書いた通り、まだプロダクトとしては開発の途上にあるようだ。しかし未来のユーザーである僕らは、その話を聞いただけで、あるいはプレゼンのビデオを見ただけで、「ふむふむ…なんとなく言いたいことは分かる…」と納得できる。なぜだろう?
それは、他の多くの技術と同じように、あらかじめ想像されたものだからだと僕は思う。人はドラえもんを作ることはまだ出来ないが、想像することはできるということだ。人間じゃないものとコミュニケーションすること、それらと一緒の生活を想像することは、太古の昔から行われてきたに違いない。世界中にある精霊や妖怪の伝説、おとぎ話は、人がそれを想像して形づくってきたという意味で、「人ならざるモノ」のデザインの試行と言えるかもしれない。
最近見たものの中では、Twitterで拡散されていた「はるさめごはん」さんのポケモン漫画に、「ポケモンとの共存」が描かれていて面白い。彼らが実生活のなかに現れたときの人間の変化や心の機微が柔らかいタッチで繊細に描写されており、興味深く、可愛くて心に残っている。ゲンガーかわいい…
— はるさめごはん (@new__37) 2017年1月1日
フシギダネはお母さんのポケモン pic.twitter.com/saZ3Og5Yyv
問題先送りマンのポケモン pic.twitter.com/jD1PGlEetu
— はるさめごはん (@new__37) 2016年12月26日
幽霊ではなく、動物でもないなにか
今まで回りくどく「人ならざるモノ」なんて言い方をしてきたけれど、他によい言葉はないだろうか。妖怪、おばけ、モンスター、鬼… いろいろ表現はあるけど、個人的にはいまひとつしっくりこない。「物の怪」みたいな感じかなあ。どうだろう。
人間の幽霊や人っぽい神さま、それからペットというのも、人間に近い人ならざるモノではあるのだけれど、イメージしているものとはちょっと違う。「人間そっくり」の存在とコミュニケーションするマナーは対人間のそれとかなり似ているだろうし、動物とのコミュニケーションはめちゃくちゃ高度にはなりづらい。(動物好きの方、すみません)
このインタビューで触れられているみたいな、「コダマ的なもの」「現代の座敷童」というコンセプトが、そもそも僕がこうしたモノに興味をもったきっかけだ。親しみやすく、応用の可能性が広がるすばらしいアイデアだと思う。もしできることなら、これを起点にして、少しでも新しいものごとを考えさせていただきたいです。
----------
そんなわけで、「物の怪」についてもうちょっと考えてみたい。(なんと続きます!)
考えつつ書きたいなと思っているのは以下のようなことだ。
・日本の八百万的神さま/妖怪観とものづくりの関係(スプツニ子さん、市原えつこさんの作品をみる)
・人が物の怪に恋するがごとく感情移入することについて(初音ミク、UNDERTALE)
・人の想像力を使ってものを「リッチでスマートにみせかける」
・可愛らしさの分析と実装
今年のsaidoでの作品に向けて、これらの考えをベースにものをつくるところまでいけたら良いな。こんな本読んだら良いよとか、面白い資料がありましたら教えて頂けると嬉しいです。がんばるぞ!
「欲しいもの」を教えて
最近、欲しいものってある?
僕は今使っているものより造形体積の大きい3Dプリンタと三次元加工ができるCNC切削機(できればローランドのやつ)、それからいい包丁が欲しい。
でも、これらはちょっと一般的な需要とは言えないかもしれない。それに、工業製品では欲しいものは少ないなあと思う。自分でプロダクトデザインをやっているのに、おかしな話だ。
ここのところずっと、「もの」にはまだ魅力があるのかどうか考えている。僕の親世代ではものすごく魅力があったらしい車、家電、オーディオみたいなプロダクトに、僕を含めた若い世代はあんまり魅力を感じていないみたいだ。
ひと昔前には、ものを買って使うことがとても良いこととされていて、みんながそれに従っていた。それが良いか悪いかは別にして、工業デザイナーはある意味花形で、ノリノリでいろんな製品をデザインしていた時代があった。そして、そこでつくられるものには一種神がかり的な魅力があったのだろう。
だけど、最近はまるで逆で、断捨離とかミニマルな生活ということばが流行し、もののない生活こそスマートで良いという論調が広がっている。確かに、最低限の家電と家具があって、ユニクロと無印で服を買って、あとはスマートフォンがあればそれでOKだと思う。僕がものづくりをする人間じゃなければそう思うだろう。でも作り手としてはちょっと寂しい。
いまの時代、「もの」は本当にもうコンテンツとしての魅力をもっていないのだろうか?トランペットが欲しくて欲しくてたまらない黒人の少年のように、ガラスケースの前に貼り付いて一日中見ているような、そんな魅力をもった存在はあるんだろうか?
そして、それが工業製品ではないとしたら、一体なんなのだろう?
もしあなたが何か強烈に欲しいものがあったら、ぜひ教えてください。
できたら、なぜそれが欲しいのかも。
(ハードディスクの肥やしになっていた文章を発掘したので、ちょっと手を加えて載せてみました)
シロメグリフを立体にしてみる
イラストレーターあけたらしろめにより無償配布されているフォント「シロメグリフ」が可愛いと評判なので、立体化してモビールにしてみた。
これは売れそう #シロメグリフ pic.twitter.com/LEUNuiYZQd
— 秋山慶太 (@keita_ak) 2017年1月8日
以下メイキングをのっけときますので、興味ある方は自分でつくってみてね!
-----
Illustratorでシロメグリフを入力し、アウトライン化して通常のパスにする
一番外の輪郭の穴を埋め、シルエットのみのパスを作る
作ったパスを3mmくらいオフセットする(ちなみに、この文字全体の大きさは横幅100mmちょいといったところです)
アウトライン化したパスを型抜きし、図のようなデータにする
このままだと目の中の部分が立体にしたときに落ちちゃうので、外側とつなげてやる(わかるかな?)
あとはレーザーカットを外注するなり、3Dプリンタで出力するなり…
厚みは1mmちょうどにしています。あんまり厚いと横から見たときに輪郭がつぶれるので。
描いてる描いてる #シロメグリフ pic.twitter.com/joU2X2Pvpa
— 秋山慶太 (@keita_ak) 2017年1月8日
出力!
できた〜 #シロメグリフ pic.twitter.com/7rzVAirCOv
— 秋山慶太 (@keita_ak) 2017年1月8日
モビールって初めて作ったけど、思いの外上手くできた。金属棒はハンズで売ってる細い真鍮棒(ストックがあった)で、糸は普通の木綿糸。絹糸のほうが毛羽立たなくて良いかもしれません。
ちなみに、文字はS A M U Iの5文字を作ったんだけど、モビールにはS A Mの3文字を使いました。毎日寒いですね。
年末年始の読書週間
年末と年始にまとまった休みがとれたので、まとめて何冊か読書をした。
お金の扱い方が苦手なので、その分野の本を中心に選んで、自分にしては結構なハイペースで読んだ。こんな時でないと「読むぞ!」という気にならないものだし。
人工知能って騒がれてるけど、実際どうなのよと思って読んでみた本。
帯の刺激的な言葉だけを見るとほんとかよと思うが、汎用(ある分野だけに特化したものではなくなんでもできる)人工知能が完成したら人間が職を追われる というのは、各国の学者たちが予測している「本気でありえる未来」らしい。しかも2030年や45年っていったら、僕まだ生きてるもんな…
機械がとても働くようになったら当然人件費のかかる人間はクビになってお金がもらえなくなるので、そうなる前に人間が生き残れるようにベーシックインカムを採用したらどうかという提案もあり、面白い。
筆者によると、人間の脳の回路を完全にコピーする人工知能(全脳エミュレーションというらしい)ができちゃったら、感情やらアートもぜんぶ再現可能になって人間はお払い箱になるようだ。なのでそれは開発するのをやめてもらって、人間の脳の仕組みを真似して回路を作る人工知能(全脳アーキテクチャ)を開発してもらうのが良いとのこと。
まじかよ…と思うのだけれど、一冊読むとその説得力にうなずかざるを得ない。
今話題のニューラルネットワークやらディープラーニングといった言葉についても簡潔に説明があり、特に前半はSFものとしても楽しく読めます。
ものすごくエキサイティング。超おすすめです。
「アメリカ人のベテラン弁護士が、13歳の息子におカネと投資と市場についてわかりやすく説明するために書かれた本」(訳者あとがきより)。
28歳の大人にとってもとても役に立つ本です。(僕が分かってなさすぎなのかもだけど)時価総額とか株式公開とか、知っておいたほうがいいんだろうけどよく分かってなかった言葉について基本的な理解を得られます。また、自分の会社の売上・利益・株価、自分の国のGDPなどを「なぜ分かっておいたほうがいいのか」についても教えてくれる。アホにとってはありがたい…!
度々強調されるのは、「自分が得るお金より多く使っては決してならない」ということで、、これって当たり前のようだけど一番大事なことだ。この本は、行き着くところまで行ってしまって破産したときには何が起こるかも教えてくれるから、そこもきちんと読んでおくと良いです。怖いよ。
読み終わって早速内容をどんどん忘れてしまっているので、復習しようと思います。
TRAVELLIUMでご一緒したアライヨウコさんに紹介してもらったマーケティングの本。
SNSを始めとしたネットを活用した販売+プロモーションの事例集としてとっても面白い。最近そこいらじゅうで聞くことづくり・場作り・体験づくりのトピックが多い。ベントレーがiPhoneを使って撮影したCMが話題になって〜という話を見て、それにつかわれたというiPhone用のレンズ欲しくなっちゃったり(本筋とはまるで関係ない)
ユーザーの価値観が変化してきているので、売る側もそれに対応して変化することでうまいこと生き残っていけますよということが繰り返し言われていたが、自分で取材したことではないようなので少し物足りない印象もありました。
「お金」って、何だろう? 僕らはいつまで「円」を使い続けるのか? (光文社新書)
- 作者: 山形浩生,岡田斗司夫 FREEex
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/11/13
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (3件) を見る
夏の深圳ツアーでご一緒していた山形浩生さんの対談本。
経済とは、お金とはこういうものなんですよという導入部分が良かった。なぜ一つの国に一つの貨幣があるの?とか、お金なんてなくても大丈夫なんじゃないの?という問いに答えてくれるので、ふむふむとうなずきつつ読めました。途中、岡田斗司夫さんの個人的お金論(カリスマ貨幣みたいな)は正直よくわからないところも。
こういう本を読めば読むほど自分の知らなさ加減が分かる。一回読んだだけだとすぐ忘れてしまうし…また読もう。
最近何回か耳にして気になっていた言葉を調べてみようと思って読んだ本。
「反知性主義」は、「知性なんていらない!」という考えかたではなく、「本ばっか読んでるインテリの頭の中よりも現場にこそ真理があるだろ!」という考え方…ということでよいのだろうか。アメリカでキリスト教を布教する「リバイバル」という集会の宣教師たちが育ててきた、反知性主義というものを歴史を追いながら説明してくれる。宣教師が「メソポタミア…メソポタミア…」と抑揚をつけて何回も繰り返すことで大入りの観衆を感涙させたというトピックが面白かった。プレゼン上手すぎだろ!
プロダクトデザインもどちらかというと現場主義のジャンルなので、反知性主義という言葉のポジティブな面については共感しながら読むことができた。でも、先述のように、工夫のしかたによって中身のない言葉だけで人を揺り動かすことが出来てしまうような危険性(まさにトランプぽいですね)もある。
高橋源一郎さんが朝日新聞に書いていたコラム「論壇時評」をまとめた本。
震災が起きてからすぐのコラムより時系列に置かれているので、 忘れかけていた出来事を振り返ることができる。
新聞に載る文章なだけあって語り口は穏やかで分かりやすい。なんと表現したらよいのかわからないけれど、独特の優しさが感じられる良い本だと思う。
最近ってなんとなくみんな攻撃的で、自分の意見とちがうものをめちゃくちゃに叩いたり、見て見ぬふりをして無視を決め込んだりする。けれどそういう態度を良しとせず、真摯にものごとを見ていこうとする姿勢が文章からにじみ出ている。勉強になります。
関西に戻ってきた途端風邪引いたので、ことしは知的体力と物理的体力をちょっとでも養えたらよいなと思います。
第5回 ニコ技術深セン観察会に参加して感じたこと
深圳の前に訪れた上海のファッションビル とにかく人が多く、子どもと若者の割合が高い |
深圳のショッピングセンター。そこかしこで食事をしていて、食べているものがやけに美味そうに見える |
Shenzhen open innovation labではvickyさん(後ろ向きの女性)が丁寧に施設の説明をしてくれた |
メイカー用試作キットというにはあまりに万能で安価なMakeblockに若干引く(いい意味で) |
Seeedのオフィスの手作り感が最高にクールでした |
NXROBOのCEO Tinさんとロボット「BIG-i」の2ショット |
いかにも危ないプレス作業をするおっちゃんに、ツアー参加者から心配の声が続出 |
野生のホバーボード、野生の電気自転車、そしてここにも赤ちゃん |
こんな塩梅でスマホの部品などを道端で売っている。八百屋じゃないんだから |
華強北には深圳の発明品を展示する施設もあり、デザインは総じてハイクオリティ |
オフィスは若いスタッフとデザインスケッチ、製品サンプルでいっぱい |
CMFが大事なのは中国でも変わらないようだ。サンプルがどっさり |
Seeedと深圳のエコシステムについて熱く語ってくれたShuyangさん |
次々生まれるコピー、リミックス製品は規制しようと思うだけ無駄 |
大衆、科学、デザインなどいろいろな要素を横断するのがMAKERだという、夢あふれる図と高須さん |
Chaifuo Makerspaceは深圳最初のメイカースペース。伝説的人物のViolet Suさんに案内して頂いた |