デザイン事務所「ふしぎデザイン」を設立しました
この度、2017年4月まで勤務した象印マホービン株式会社から独立し、デザイン事務所「ふしぎデザイン」を東京に設立いたしました。
お知らせするのがすっかり遅くなってしまいましたが、もろもろ準備が整いましたので、こうしてブログを書いている次第です。
今までお世話になった皆さま、これから出会うはずのみなさま、どうぞよろしくお願いいたします!!
なぜ独立したのか
一言で言って、象印マホービンは暖かい、とても良い会社でした。
そんな良い会社をなぜ飛び出したのか?
その理由は、「工業デザイン=ものづくりに関わるデザイン」の可能性を試してみたい、もっと拡げてみたいと思ったからです。
工業デザインは、その名前の通り工業製品の製造プロセスの一部として発展してきた分野です。
その中で、僕の関わってきた家庭用品という分野では、デザインは「もっと快適なもの」「もっと便利なもの」「より美しいもの」を生み出すためのスキルでした。これはとても良い価値の生み出し方だと思いますが、一方でその価値は、既に市場に溢れ、飽和しているようにも見えました。
仕事をするうちに、もっと違う、新しい価値を生み出すための方法としてデザインの力を活かせないか?という問いかけが、だんだん自分の中で大きくなってきました。
後戻りできない人生、ひとつここで舵を切ってみようと決断したのです。
「ふしぎデザイン」はどんなデザイン事務所か
Webサイトのaboutページに、ふしぎデザインのステイトメントを掲載しました。
プロダクトデザインは、主に快適さや美しさといった価値を作り出すために活用されてきましたが、現代の市場ではそれらの価値は既に普及し、飽和しています。そのような状況下で求められているのは、ユーザーの心を動かし共感を生むデザイン、そしてプロダクトだと考えます。
ふしぎデザインは、そのような新しい価値としての「ふしぎ」を探求し、生み出すことを目標にしています。
一つ前の段落でも書きましたが、「便利なもの」「美しいもの」「快適なもの」を作る、という以外に、デザインの力を使って生み出せる良いものがあるんじゃないか、という問いを自分に向けて立てました。
それについて自分なりに考えた答えが「使う人の心に触れるもの」です。
ユーザーを感動させるというとちょっと大げさですが、喜ばせたり、驚かせたり、ほっとさせたりすることは強い価値だと思いますし、時には(不良品のようにではなく、悲劇のように)悲しませたりすることだってあってもいい。それだって、もしかしたらものすごく大きな価値になるかもしれません!
例えば、昨年の秋に発表した自主制作プロダクトTRAVELLIUMは、旅行中の写真を感熱紙に印刷してくれるという機能を通し「旅の情緒を膨らませ、追体験させる」ことを価値の中心においてデザインしました。
これをデザインした体験を通して、情緒的なものから価値を生み出すことができるんだ!と気づくことができ、そうした「ユーザーの心に触れるもの」を一言で、かつキャッチーに表すことのできる言葉として、「ふしぎ」という言葉を選びました。
我ながら、覚えやすく親しみやすい、なかなか良い名前だと思います。
「ふしぎデザイン」は何ができるのか
さて、ふしぎデザインは、具体的に何ができるんでしょうか?
働き始めるにあたって、僕は以下の2つの仕事を提供できると考えています。
①工業デザインの仕事
僕のスキルの中心には、インハウスデザイナーとして働く中で培った工業デザインの技能があります。製品開発プロセスの中に入りこみ、以下の技能を活かして、ものづくりのお手伝いを上流から下流まで行うことができます!
・どんなものが必要かリサーチして、デザインコンセプトを設定する技能
・コンセプトに立脚して、デザインのアイデアを展開する技能
・アイデアを見える化し、誰にでもわかりやすく評価できるようにする技能
・製品の形やインターフェースを検討し、提案する技能
・製品の色を検討し、提案する技能
・提案した色/形を、実際の製品に実現可能な形で実装できるように調整する技能
ちょっと言葉が硬くなってしまってすみませんが、要するに、「まだここにないものを想像して、現実化するお手伝い」ができます!ということです。
②工業デザインのスキルを応用した、幅広いものづくりの仕事
こちらが「ふしぎデザイン」の特色になる部分です。
上記した「工業デザインの技能」は、最終成果物が工業製品でなくとも活用することができます。
アイデアを見える化する技能は製品開発に限らず様々なプレゼンテーションに必須ですし、色と形を詳細に検討する技能は、アート作品やインテリアの外装設計にも使えます。どんなものが必要かリサーチして、コンセプトを立てる技能を応用すれば、教育や地域活性化の課題に取り組むための強い武器にもなるでしょう。
例えば、以下の事例では、最終成果物は住宅とそれに付随するアタッチメントですが、アイデアの見える化や形の検討という技能を使ってスタディを繰り返し、コンセプチュアルなテーマを実際の部屋として落とし込むことに貢献しました。
このように、ふしぎデザインは、工業デザインの技能を拡張し、新たな業務領域にチャレンジすることも目指しています。
「デザイン」というてこ( =技能)を持って旅をし、いろいろな方法で石を持ち上げる(課題を解決する)ようなイメージです!
というわけで、今後働いていく中で、主に以上の2種類の仕事を提供することができます。
仕事をする中で、ステイトメントに掲げた目標に向かって努力することももちろんですが、きちんとした成果を出し、いろいろな方の役に立つことができれば良いなあと考えています!
最後に(再びごあいさつ)
今は新しいことを始める高揚感と不安で日々どきどきしていますが、幸いなことに、いくつかのお仕事の機会をいただき、少しずつ働きはじめることができそうです。
仕事を通して、まだ会ったことのない人に出会えること、行ったことのない場所に行けること、見たことのないものを作り出すことを心から楽しみにしています。
「ふしぎデザイン」と秋山慶太を、どうぞよろしくお願いいたします!