ふしぎデザインブログ

デザイン事務所「ふしぎデザイン」の仕事やメイキングについて書くブログです。

文章を書くことについて





文章を書くことはむずかしい。

デザイナーにとってもっともパワフルな伝達方法はビジュアルだと信じていますが、一番みんなに通じる方法は文章なのではと思うこともよくあります。ビジュアルを操るデザイナーも、いろんな人に自分の考えをスムーズに伝えるには、文章ぐらい書けた方がいい。でもいざ書き始めてみると、〜です。〜です。〜だと思います。みたいなリズムのない文になってしまうこともしばしば。

インターネットで身の周りを見ていると、深い知識を感じさせる繊細な文章や、詩的に印象をつづった手触りのある文章など、みんながそれぞれ自分の言葉のセンスを持っているのが見て取れて、とても楽しい。特によく知っている人の文章を読むのは、その人の話しを聞くようで特別な味わいがあります。

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最近、古本屋で柳宗悦の「民藝とは何か」という本を買い、その文章にちょっと感動しました。
1941年発売、文庫本より少し大きいサイズ。箱入りのクラシカルな装丁がかっこいい本です。内容はタイトルの通り、当時新しいアイデアだった民藝を誰でもわかるように解説してくれるもの。
この「誰でもわかる」という部分が徹底されていて、文体がとても読みやすく理解しやすい。あとがきにも「平易な文章を書くことを心がけた」とあるように、旧仮名遣いにも関わらずすいすい読み進むことができました。「〜だ。〜だ。」という言い切りが続く部分もあるのに、まったく単調でも退屈でもないのが凄い。むしろそこからは、民藝思想を世に広めたい、多くの人に理解してもらいたいという強い意思が感じられました。

自分の文章では、言いたいことを分かりやすく書けたらとりあえずは満足です。しかしそれにとどまらず、単なる説明文になりきらない力のある文章が書けたらすばらしい。簡単に読めてパワーのある柳宗悦の文章をぜひお手本にしたいです。